“現代のクセ”ことカイホロードシスを整え、肩甲骨と股関節を自由に!

肩甲骨と股関節をつなぐのは、姿勢。どちらかが崩れれば、動きは止まる。背中を丸め、骨盤を反らせる“現代のクセ”ことカイホロードシスを見直して、肩甲骨と股関節をより自由に!

取材・文/井上健二 イラストレーション/Azusa 取材協力/牧野講平(森永製菓トレーニングラボヘッドパフォーマンススペシャリスト)

初出『Tarzan』No.915・2025年11月20日発売

正しい姿勢とカイホロードシスの姿勢
教えてくれた人

牧野講平(まきの・こうへい)/森永製菓トレーニングラボヘッドパフォーマンススペシャリスト。米国イースタンワシントン大学卒、弘前大学医学部博士課程後期在学中。高梨沙羅、前田健太らの他、多くのオリンピアンのサポートを行う。NSCA CSCS。日本コンディショニング協会理事。

カイホロードシスとは?

現代人の多くは背中が丸まる猫背(円背)だが、最近ではその中身が変わりつつあるとか。

「以前は円背と骨盤後傾がセットでしたが、近頃は円背なのに骨盤が過剰に前傾する反り腰が増えてきました。これを“カイホロードシス”と呼びます」(コンディショニングコーチの牧野講平さん)

その原因は意外にも、ストレスが多い現代生活そのものにある。

ストレスがあると自律神経の交感神経が優位となり、息を浅く吸うばかりで、深く吐けなくなる。

「すると肺を収める肋骨下部は広がり、上部が上がり、吸気を担う背中の筋肉が緊張する。釣られて骨盤は前傾して反り腰となり、前に倒れないようにバランスを取ろうと胸椎のカーブが強くなる後彎が生じ、猫背になるのです」

カイホロードシスの説明図

呼吸の異常などから、胸椎の後彎カーブが強くなり(カイホシス)、骨盤の前傾角度が強くなる(ロードシス)のがカイホロードシス。

カイホロードシスによって、肩甲骨と股関節はどうなる?

カイホロードシスは肝心の肩甲骨と股関節にどう影響するのか。肩甲骨から見ていこう。

「円背だと肩甲骨が背骨から離れて外転位で固まります。肩甲骨を背骨に引き寄せる菱形筋がこわばり、肩甲骨を外転させる前鋸筋が弱体化。肩甲骨内側の縁が浮き出る“翼状肩甲骨”を招きます」

続いて股関節はどうなる?

「骨盤が前傾しすぎると、骨盤が開く“アウトフレア”が起こる。スポーツなどでは股関節を内向きに回す“内旋”が大事ですが、アウトフレアだと股関節の外旋が強くなり、内旋しにくくなります」

カイホロードシスのままで肩甲骨や股関節を整えたり、連携させたりするのは無理。思い当たる人はまずカイホロードシス解消を。

吸気(息を吸う)
胸郭が広がり、横隔膜も収縮して下がる

交感神経優位で胸郭が広がり、横隔膜も収縮して下がり、吸気を促す。

胸郭のスペースを広げようとする。

胸郭の動きで呼吸は決まる。吸気のため背中の筋肉で上部肋骨は上昇。反面、肋骨の下部は広がり、胸郭のスペースを広げようとする。

悪しき呼吸が引き金となるが、それが固定化し肋骨や横隔膜の動きが悪くなると呼吸改善のみでは解決できず、下のエクササイズが必須に。

カイホロードシスの修正エクササイズ。

猫背と反り腰で硬くなった筋肉をほぐす。

硬くなった筋肉をほぐす箇所

1.深層外旋六筋・大臀筋・中臀筋のリリース(左右各20〜30秒間)

  1. 左のお尻(骨盤の真ん中の仙骨と大腿骨の大転子の間)にテニスボールを当てて、床に坐る。
  2. 体重をかけ、ボールを前後左右に動かし、硬くなった深層外旋六筋を緩める。左右を変えて同様に行う。次に深層外旋六筋の少し上にボールを当てて同様にボールを動かし、硬くなった大臀筋と中臀筋を緩める。

2.脊柱起立筋・菱形筋のリリース(3か所とも左右各20〜30秒間)

  1. 背骨の左右を縦に走る膨らみ(脊柱起立筋)にボールを当てて、床で仰向けになって体重をかける。
  2. 肩甲骨の間(菱形筋)、みぞおちの真後ろ、腰の3か所を念入りにほぐす。左右を変えて同様に行う。

3.大腿筋膜張筋のリリース(左右各20〜30秒間)

  1. 左の腰骨の出っ張り(上前腸骨棘)の真下にボールを当てて床に横向きに寝る。
  2. 左肘をついて上体を起こし、右手を腰に当てて上から押さえる。体重をかけながらボールを前後左右に動かし、硬くなっている大腿筋膜張筋を緩める。左右を変えて同様に行う。

4.広背筋と外腹斜筋のリリース(左右各20〜30秒間)

  1. 左の背中で、ヘソの真後ろの外側寄り(広背筋と外腹斜筋の境目)にボールを当てて、床で仰向けに。
  2. 左腕を横に伸ばし、カラダを左へ傾けて体重をかけ、ボールを転がしながら広背筋と外腹斜筋を緩める。左右を変えて同様に行う。
肋骨の内旋と骨盤の後傾を促す筋肉を鍛える。

デッドバグその1(10回×2〜3セット)

デッドバグその1

  1. 仰向けで両膝を腰幅で90度曲げ、股関節の真上に。両腕を肩幅で伸ばし、前鋸筋を刺激。手のひらを向かい合わせる。
  2. 息を吐きながら上体を起こし、肋骨下部を引き込む(内旋)。息を吸って戻る。

デッドバグその2(10回×2〜3セット)

デッドバグその2

  1. 上体を起こした姿勢から、息を吐きながら両膝を額へ近づけるようにお尻を引き上げ、脇腹の内腹斜筋の収縮で骨盤の後傾(肛門を頭に向ける傾き)を促す。
  2. 息を吸いながら戻る。

キャメル(10回×2〜3セット)

キャメル

  1. 両手、両膝を床について四つん這いになり、爪先を立てる。手は肩、膝は股関節の真下につく。
  2. 床を両手で押して肩甲骨を天井へ突き出し、前鋸筋を刺激。息を吐きながら、引き込んだ肋骨下部と後傾した骨盤を近づけるようにお腹に力を入れて、背中を丸める。
  3. 息を吸いながら戻る。背中を丸める際、太腿後ろ側の内側(半腱様筋、半膜様筋)が硬くなれば、正しくできている証拠。