〈adidas by STELLA McCARTNEY〉の《アースライト2.0》

〈adidas by STELLA McCARTNEY〉の《アースライト2.0》|これ、履きたい。

スタイリング・文/小澤匡行 写真/吉川周作 ヘアメイク/曳田萌恵

〈adidas by STELLA McCARTNEY〉の《アースライト2.0》
〈adidas by STELLA McCARTNEY〉の《アースライト2.0》

シューズ《EARTHLIGHT 2.0》38,500円、Tシャツ16,500円、ジップフーディ18,700円、タイツ16,500円、以上アディダス バイ ステラマッカートニー、問い合わせ先:アディダス ジャパン 公式サイト

〈adidas by STELLA McCARTNEY〉の《アースライト2.0》
〈adidas by STELLA McCARTNEY〉の《アースライト2.0》
〈adidas by STELLA McCARTNEY〉の《アースライト2.0》
〈adidas by STELLA McCARTNEY〉の《アースライト2.0》

文・小澤匡行

初めて箱根駅伝がテレビ中継されたのは1987年のこと。往路スタートの大手町から小田原あたりまでの区間はさておき、箱根山中の電波障害を当時の放送技術でクリアするのは、相当の苦労があったそうだ。そうした日テレの頑張りの甲斐あって正月の風物詩となり、今年の視聴率は最大28.8%だったそうだ。
大学同士が繰り広げる熱いレースの裏に、こうした視聴率が影響?災い?してもう一つの競い合いが生まれた。それがシューズのシェア率だ。出場大学が20あって、10区間あると、200人もの箱根ランナーがいるわけで、彼らがどのメーカーのシューズで走ったか。その人数の多さが業界のトレンドというかメーカーの「強さ」に直結してしまう時代になった。メーカーも年末に注力商品を発表することに必死だ。そして今年は、ここ数年着々とシェアを伸ばしてきた〈アディダス〉が、とうとうトップ(全体の36.2%・Runtrip編集部調べ)になった。

トップランナーに選ばれるシューズとは、速く走れるテクノロジーと、速く見えるデザインという2つの魔法がかかっていないといけない。ただ、その魔法が強すぎるとタウンユースとの間に溝が生まれる。F1マシンが街に溶け込まないのと同じこと。歴史を振り返るとファッションになったスポーツシューズには「少し重く見える」という共通点がある気がする。

そんな点から、今回はあえて〈アディダス バイ ステラマッカートニー〉の《アースライト2.0》を選んでみた。近年のランニングシューズは一枚で編み立てたテキスタイル構造が主流で、軽さとフィットを追求するためにレイヤーを作らない傾向にある。その中でこうした彫刻的なフォルムは現代的なアプローチを感じるし、オールブラックの配色もファッション的なバランスを取りやすい。

ソールには、フルレングスのグラスファイバー製の5本骨状バー、ENERGYRODS 2.0が搭載されている。これはそもそも足指に沿ってバラバラに配置されていたカーボンを、足裏一体に配置するために単一構造に進化させたテクノロジー。2023年に安定感のあるグラスファイバーでアップデートさせている。着地の衝撃を次の一歩に変える、つまりエネルギーのロスを低減することでスイスイと前に進む感覚になれるのだ。現在でもエリート向けの《アディゼロ ボストン12》にも使われている機能を、こうしたファッション向けのシューズにも使われるとありがたい。ストリートから森の中のトレイルまで、冒険心を刺激するシューズ、と〈アディダス〉も言っている。

〈アディダス〉は他のメーカーに比べると革新的な機能をいろいろなかたちで提案するのがうまいというか、考え方が柔軟というか、懐が深い気がする。〈アディダス バイ ステラマッカートニー〉はアパレルにもパフォーマンス性の高い素材を使いながら、色や柄、パターンに遊びの余地がある。「それだと機能が活かされないんじゃ?」と思ってしまうオフ・ボディ・ルックも多いのだが、その抜けた感じが可愛らしさのヒントだし、スポーツへの入り口にもなるのだろう。

ベジタリアンのステラ・マッカートニーは、エシカルファッションのパイオニアで、素材には並々ならぬこだわりがある。このシューズも天然素材と植物原料からなるバイオ素材を組み合わせ、20%以上の再生可能素材を使用している。社会は常に目まぐるしいスピードで移り変わっていて、時代についていくことが難しい時代になっている。だからこそ一人一人が自分を取り巻く環境を大切にして、自分の心身を動かしていくべきだし、そうした価値観がファッションに落とし込まれるとワークアウトも楽しくなる。何g軽くなった、反発性能が何%上がったなど、速く走るための数値だけでなく、何%がリサイクル素材であるという地球が長生きするための数値も、今後は大事になってくる。とくにファッションでランを楽しむ人は、シューズ選びの物差しにしてもいい。

〈adidas by STELLA McCARTNEY〉の《アースライト2.0》

Loading...