12月の山・御岳山｜写真家・野川かさねが選ぶ今月の山

今月の山　御嶽山みたけさん

標高／929m
おすすめコース　日帰り
ケーブルカー御岳山駅（15分）御岳ビジターセンター（15分）御岳神社（50分）天狗岩（25分）ロックガーデン（10分）綾広の滝（30分）天狗の腰掛け杉（40分）ケーブルカー御岳山駅
歩行時間計：3時間5分

一年の締めくくりは、お礼参り登山。

12月、八ヶ岳や北アルプスなど2,000mを超える高い山々は雪に覆われます。そうなると登山のハードルはぐっと増して、気軽に出かけられる山は少なくなります。そんな冬には、身近な低山に出かける機会が多くなります。

中でも東京都青梅市にある御岳山は、12月になると自然と足が向く山。標高929mと小ぶりな山ですが、山頂には古くから山岳信仰の対象となっている武蔵御岳山神社があり、神聖な雰囲気が漂う山です。

12月に登りたくなる理由はいくつかあって、ひとつは１年の締めくくりに御岳山神社にお参りすることです。１年間、色々な山に登って、毎回無事に帰ってこられた。そのお礼をしつつ、また来年も元気に、安全に山に登れますように。そんなお願いもしたいなと思うのです。

もうひとつの理由は、冬でも緑を感じられることです。東京周辺の山は雪が積もることはほとんどありませんが、広葉樹が多い山は木々の葉が落ちて、少し寂しい雰囲気になります。でも御岳山には杉などの常緑樹が多く、特に沢沿いを歩くロックガーデンと呼ばれるエリアは足元にみずみずしいコケの絨毯が広がって、冬でも植物の力強いパワーと、すがすがしい空気を感じながら歩くことができます。

冬の晴れた日は空気が澄んで、とても気持ちがいいですが、私は曇りの日も好きです。山全体に霧がかかって、なんともいえず神秘的な雰囲気。風景はもちろんですが、御岳山神社に象徴されるような御岳山に息づく信仰が、そんな空気を醸すのかもしれません。

途中には滝があったり、森に包まれる道があったり、展望が開けるスポットもあります。３時間程度のゆったりしたハイキングですが、様々な風景に出会えるのも魅力。御岳山神社とケーブルカー御岳山駅の間にはちょっとした商店街があるので、帰り道に立ち寄るのも楽しみのひとつです。

御岳山には江戸時代から続く宿坊が今も多く残り、山の上に人の暮らしがあります。ほかの山では感じられない山と人の関係を垣間見ることもできて、登るたびにその歴史を深く知りたくなります。来年は御岳山神社で開催される伝統的な太々神楽を観覧しにいったり、御岳山に伝わるオオカミ信仰について学んだりしたいなと思っています。

バリエーション豊かなコースどりが魅力。

御岳山はケーブルカーで標高831mの地点まで登れるとあって、初心者でも無理なく歩ける山。冬でもほぼ積雪がないため、雪山装備がなくても楽しめる。

ハイライトは沢沿いを約1.5km歩くロックガーデン。渓流とコケを見ながら歩ける気持ちのいいハイキングコースで、岩の上を歩くアスレチック的な楽しみもある。ただ雨や降ったり、霜が降りたりした後は滑りやすいので、足首をしっかりとホールドできるトレッキングシューズを用意すること。

御岳山周辺は様々なハイキングコースがあり、体力に合わせてルートどりができるのが魅力。ロックガーデン経由で、標高1,077mの御岳山神社奥の院まで登ったり、日の出山や大岳山など近隣の山へ縦走したりすることもできる。

冬の森には野鳥の姿があり、美しい声が響く。運がよければ渓流にヤマメの姿も見られるかもしれない。短いコースでもゆっくりと歩くことで、様々な自然の表情を見ることができる。

低山といえども冬は気温が低く、歩いている最中は汗ばんでも、立ち止まると急に体温が下がる。フリースやレインジャケットなどで防風、防寒対策をしっかりとして、ニット帽や手袋などの小物も準備すること。また日没が早く、16時には暗くなる。15時半までにはケーブルカー御岳山駅に着くよう計画を。万が一、下山が遅くなった時にために、日帰りでもヘッドライトを携帯すること。