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話題の「HIIT」とは何か? その仕組みと効果を徹底解説

時短で4分間で終わるから…だけじゃない。HIITの仕組みと魅力を「10のトピック」にまとめた。

① HIITとは「高強度な間欠運動」。

学生時代のマラソン大会、体育の時間のバスケやバレー。ホイッスルが鳴ったらある程度の時間、カラダを動かし続けるのが、いわゆる運動。と、誰もがそう思いがち。

HIIT(ヒット)はそうした運動のイメージをひっくり返すトレーニング法。その名の通り、高強度(High Intensity)の運動を休憩を挟んで(Interval)行うトレーニング(Training)のことだ。

HIIT
強度の高い運動を休憩を挟み間欠的に行うのがHIIT。運動強度は高いが時間は短い。
Azuma Kら, 2017年より

数十秒間強い負荷をかけた運動を行った後、短時間の休憩または負荷を落とした運動を挟み、再び強い負荷をかけた運動を行う(=間欠的運動)。これを数セット繰り返すというもの。

ランニングならば約1時間、球技ならばトータルで数十分カラダを動かし続けるが、HIITなら総運動時感はものの数分

② 高強度=会話ができないぐらい。

では、高強度運動とは具体的にどのようなレベルの運動なのか?

エネルギーの生成ルートから考えてみよう。まず日常生活やウォーキングなど軽い運動をするとき、カラダは脂質と糖質を約半分ずつエネルギーとして利用している。この際は身体的にも精神的にも、とても楽ちん。笑いながら会話ができる。

ちょっと強度を上げてジョギングをしてみる。ウォーキングより多くのエネルギーが必要なので、エネルギーの比率は糖が脂質を上回る。すると、乳酸という糖質代謝のプロセスによる代謝産物が溜まり始める。運動経験がない人ならば、この時点でややシンドい。これが、いわゆる中等度の運動レベル

HIIT
ゾーン1の軽い運動では血液中の乳酸は作られては消費されているので変化なし。ゾーン2から蓄積が始まり高強度のゾーン3では急増。もはや会話などできない運動強度。HIITの運動はこのゾーンに相当する。
グラフ作成/吉岡利貢(環太平洋大学体育学部体育学科)

中等度運動の序盤は酸素が十分に全身に行き渡り、乳酸の生成と消費のバランスがまあまあ保たれている状態。会話はまだできる。

さらに、どんどん強度を上げて800mを全力疾走してみる。こうなるとエネルギーのほとんどは糖質で賄われることになり、血中の乳酸濃度はうなぎ上りに跳ね上がる。酸素の供給が間に合わないので息は上がり、心拍数は増す一方。運動経験の有無にかかわらず、非常にツラい。もはや喋ることは不可能。すなわち、これが高強度運動だ。

③ 心臓の能力が3割アップ。

体力アップに関わるある興味深い実験がある。①非常に強い強度のインターバルトレーニング②高強度の有酸素間欠運動、そして③中等度の運動を8週間行ってもらい、運動前に比べて体力がどのくらい変化したかを比較した実験だ。

①はアスリートレベルのえげつないHIIT、②は一般人にもできるややマイルドなHIITと考えてほしい。すると、中等度運動に比べてHIITを行ったグループに軒並み体力アップが見られたのだ。

1分間に体重1kg当たり取り込むことができる酸素の量を最大酸素摂取量という。この数値が高いほどカラダに取り込める酸素の量が多くなるので、全身持久力の指標となる。

HIIT
最大酸素摂取量と心筋の重量が増すことで、1回の心拍で押し出される血液の量が増え、逆に安静時の心拍数の数値は下がる。
Matsuo et al. Med Sci Sports Exerc, 46: 42-50, 2014

さらに心筋の重量は心筋の分厚さを示す指標となり、数値が大きいほど全身に血液を送る能力が高いということ。

ちなみに、①の運動時間は5分②は13分③は40分。このうち②のHIITを行ったグループが最も体力アップの割合が高かった。別の実験ではHIITトレーニング後、最大酸素摂取量が28%、さらには35%増加したという結果も。驚き!

④ 実は低体力者ほどやるべき。

宇宙で体力が低下した飛行士を想定し、低体力の被験者で実験した面白い結果も見つけた。宇宙と言われても無関係と思われがち。ところが、関係は大ありだ。

地上にいる宇宙飛行士は確かに強靱な体力の持ち主。ところが無重力の宇宙に出るやいなや筋肉や心臓への負荷が最小限になる。これはすなわち、ベッドでごろごろ過ごしたり一日のほとんどをデスクワークで過ごす現代人の生活環境とほぼ同じ状態。

被験者をベッドレストの状態で3週間過ごさせた実験によれば、3週間で約30年分、心肺機能が低下するという。これ、25歳の青年の体力が、たった3週間で55歳のおっさんレベルになってしまうということ。かように人間の心肺機能は重力や運動による負荷に左右されるのだ

HIIT
男性の世代別最大酸素摂取量の平均値。3週間のベッドレストで20代前半が50代後半レベルに。

宇宙空間にいるアストロノーツは運動不足の低体力者と極めて似ている。ならば、マイルドなHIITで数十年分の体力を取り戻すことは決して不可能ではないのだ。

⑤ 週3回でも効果あり。

「③ 心臓の能力が3割アップ」の実験結果はそれぞれ週に5回の運動を行って導き出されたもの。いくら短時間とはいえ、ほぼ毎日のように運動しなけりゃならないとなると、心理的にはなかなかの負担。

ならばと週5回ではなく週3回の頻度で、ややマイルドなHIITを行った実験結果が下のグラフ。

HIIT
週5回のHIITの最大酸素摂取量の変化率は8週間で+22.5%。これに対して週3回の場合は+22.4%とほぼ変化が見られなかった。ちなみに週5回の中等度運動の最大酸素摂取量の変化率は+10%。
Matsuo et al, 2014

週5回の頻度を3回に減らしても、最大酸素摂取量の増加率は変わらなかった。ということは、1週間に3回だけ短時間の高強度トレに励めば、体力増強が見込めるということ。これなら心身にかかる負荷はぐっと減る。

ちなみに、週5回の中等度運動に励むより、週3回HIITを行う方が最大酸素摂取量の増加率は大きいという結果に。さて、どちらの方が効率がいいかは、もうお分かりいただけたろう。

⑥ 時間をかけず、血液サラサラに。

運動によってHDLコレステロールの数値が上がる。これはすでによく知られている事実。

LDLコレステロールが全身にコレステロールを運ぶデリバリー役なのに対して、HDLコレステロールは増え過ぎたLDLを回収する役割を果たす。よって動脈硬化などの予防にはHDLの値が高いことが条件となる。

HIITと中等度の運動を週3回、8週間行い、その後、カロリー制限を4週間行った実験によると、どちらのグループもHDLコレステロールの数値が増加した。ただ、すべての実験を終えた段階では、HIITを行ったグループの方が変化量が多い傾向が見られたという。

HIIT
週3回、8週間の運動中、HDLコレステロールの数値が増え、その後のカロリー制限期間では数値がやや低下した。
松尾知明「メタボリックシンドロームへの時間節約型アプローチ:インターバル有酸素運動の活用」

効率的に血液サラサラ効果が期待できる。これもまた、HIITの強みのひとつだ。

⑦ たった5分で3時間燃え続ける。

繰り返すようだが、HIITは強度は高いが極めて短時間の運動。ということは、運動中にガンガン脂肪を燃やしてスッキリ痩せるという類いのトレーニングではない。とはいえ、脂肪燃焼がまったく行われないというわけではない。嬉しいおまけは運動後にしっかりついてくる。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)が考案した5分のHIITプロトコルによる実験結果を見てみよう。かなり強度の高いスプリント系のHIITと有酸素系のHIIT、そして中等度の運動をした場合のエネルギー消費量を比べた実験だ。

HIIT
HIIT
運動全体のエネルギー消費は中等度運動に軍配が上がるが、赤い部分のEPOC効果はスプリント系HIITが最も高い。
Matsuo et al. Aviat Space Environ Med. 83: 783-9, 2012.

運動をした後にエネルギーが消費される現象を、EPOC(運動後過剰酸素消費量)という。運動後は心拍が上昇し、酸素が不足し、エネルギーが減っている状態。これを定常状態に戻すために必要なエネルギーがEPOCとして消費される。

運動強度が高いほどEPOCは増し、スプリント系HIITでは運動後3時間で30キロカロリー強消費される。たった30キロカロリー? いや、たった5分間でと考えてほしい。

⑧ 糖代謝が改善、メタボにも効く。

近年、HIITのカラダへの作用は医学界からも大きな注目を浴びている。HDLコレステロールの数値が上がるだけでなく、血糖値のコントロールにも一役買うことが分かってきたのだ。

HIITを行うと最大酸素摂取量が上がる。これは細胞内のエネルギー産生工場であるミトコンドリアの数が増えるからだ。さらにHIITでは糖質を細胞に取り込むグルット4という輸送体も増えることが分かっている。つまり、細胞に糖質を送り込み、ミトコンドリアがこれを消費するルートができあがるのだ。

カナダのマックマスター大学の研究報告によると、12週間HIITを行ったグループは、同じ期間中等度運動を行ったグループよりも糖質の取り込み能力が改善したという。メタボの代表格、高血糖の改善もHIITの得意技ということ。

⑨ 有酸素のようなヒマを感じない。

運動がカラダにいいということは、十二分に分かっている。分かってはいるが生活の中に取り込めない。その理由の第1位はというと、下のアンケート結果をご覧の通り、「時間がない」から。

[ 運動しない理由トップ5 ]
  • 1位 時間がない … 47.4%
  • 2位 運動は面倒 … 31.7%
  • 3位 他にやることがある … 25.6%
  • 4位 運動が嫌い … 16.9%
  • 5位 運動が得意ではない … 16.8%

※東京圏労働者9,406名へのWEB調査


1回30分以上の運動を週2回、1年以上続けている人は全体の34.2%。それ以外の人の運動しない理由(複数回答)。

毎日の生活で優先すべきノルマは山ほどあり、運動をしている暇などないというエクスキューズだ。確かに1回につき30分以上時間がかかる有酸素運動なら、百歩譲ってそれも分かる。でも、短時間でフィニッシュできるHIITなら話は別だ。

運動強度が高くても、数十秒の短い時間なら誰にでも耐えられる。終わりがすぐそこに見えているので、長時間の有酸素運動のような退屈を感じるヒマがない。それに30分毎日歩くのは無理でも、1日たった4〜5分なら時間の工面はできるはずだ。

つまり、HIITをやらない理由として「時間がない」というフレーズは通用しない。よって運動習慣がない人ほどHIITがおすすめ。

⑩ 種類もあるし、9回で効果実感。

アスリートの体力トレーニングとして産声を上げたHIIT。近年は世界中で健康効果に関する研究が進み、心臓病やメタボ患者の運動療法としてHIITを取り入れる研究者が次々と現れている

HIITの黎明期を象徴するタバタトレーニングは、ハードすぎて一般人にはとても無理。でも、最近では一般人でも実践できるHIITのプロトコルはよりどりみどり状態だ。

HIAT(低体力者向け)
  • 3 × 3 min/最大酸素摂取量80〜85%の運動を3分、50%の運動を2分。3セット。
  • 4 × 4 min/最大酸素摂取量90%のランを4分行い、70%の運動を3分。4セット。
  • 10 × 1 -min HIIT/最高心拍数の90%に相当する負荷で1分間の自転車運動、1分間の休息を挟んで計10回。
SIT(アスリート向け)
  • タバタトレーニング/最大酸素摂取量の170%の運動を20秒行い、10秒レスト。7〜8セット。
  • JAXAプロトコル/最大酸素摂取量120%の運動を30秒行い、15秒のレスト。7セット。

高強度運動のトータルの時間は短いもので4分、長いものでも十数分。体力に合わせて選択すればよし。

研究者の現場の声からひとつ言えることは、週2〜3回の頻度で約3週間行うと、必ず体力の向上が自覚できるということ。どんな低体力者だとしてもだ。週3回なら計9回、驚きの効果を体感してほしい。

取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/ヤマウチショウゴ ヘア&メイク/村田真弓 取材協力/松尾知明(労働健康安全機構労働安全衛生総合研究所人間工学研究グループ、JAXA客員研究員)

初出『Tarzan』No.807・2021年3月25日発売