アディダスから満を持して登場する、カーボンプレート搭載のシューズ《アディゼロ プロ》
〈アディダス〉のランニングシューズ史上、初めてカーボンプレートを搭載。優れたエネルギー効率を実現した《アディゼロ プロ》の発売で、〈アディダス〉の逆襲が始まる?
取材・文/神津文人
アディダス初のカーボンプレート採用シューズ。
1秒でも速く。ベストタイムの更新を目指すランナーに向けた開発された《アディゼロ》シリーズ。最上位モデルとなる《アディゼロ プロ》が、4月1日に発売される。
最大の特徴は“CARBITEXカーボン プレート”という名のプレートが搭載されていることだろう。現在ではいくつかのスポーツブランドが、カーボン素材のプレートを採用したランニングシューズを展開しているが、アディダスのランニングシューズでは、初の試みだ。
CARBITEXカーボン プレートを搭載したミッドソールに採用されているのは、〈アディダス〉の独自素材であるLIGHTSTRIKE(ライトストライク)とBOOSTフォーム。
LIGHTSTRIKEは、すでに展開されている《アディゼロ ジャパン 5》や《アディゼロ タクミ セン 6》などにも使われているフォーム素材。一般的なEVA素材よりも40%ほど軽く、反発性の高さが特徴のアディダスのBOUNSEフォームと同程度の反発力を備えている。
また、LIGHTSTRIKEはバスケットボールシューズにも使われている素材で、安定性も抜群。着地時の横ブレが抑えられるため、エネルギーロスが少ない。BOOST フォームは、多くのランナーの方がご存知だろう。クッション性と反発性を両立した素材で、温度の変化に強く、EVAより劣化しにくい。
CARBITEXカーボン プレート、LIGHTSTRIKE、BOOSTフォームを組み合わせたことで、優れたエネルギー効率を実現。着地衝撃を緩衝しながら、ランナーが生み出すパワーを推進力へと変え、足運びをサポートしてくれる。
アディダス ランニング ジェネラルマネジャーのアルベルト・ウンシーニ・マンガネリ氏は「アディゼロ プロはアディゼロ フランチャイズの頂点であり、アディダスから生み出された、これまでで最速のシューズになるでしょう」と評価。
そして、アディダス ランニング デザイン デザイン部門ヴァイスプレジデントのサム・ハンディ氏が「アディゼロ プロは、ランナーの願いである速く走るという願いを叶えるものです」と語っていることからも、《アディダス プロ》が生むスピードに自信あることがうかがえる。
プレート以外も、こだわり抜かれた設計。
アッパーに採用されているのは、〈アディダス〉が採用するメッシュ素材の中でも最軽量のセラーメッシュ。0.01mm単位までこだわり抜いて作られたマイクロフィットラストとの相乗効果で、足にしっかりとフィット。長時間のランニング時に快適なフィットを提供し続けながら、シューズと足のズレによるエネルギーロスを軽減する。
アウトソールは、コンチネンタルラバー製。自動車やレース用自転車でも使われるコンチネンタルラバーは、高速で走った際も確実にグリップ力を発揮するのが特徴。スリップによるエネルギーロスが少ないということだ。
大幅に高まった推進力を実感。
実際に《アディゼロ プロ》で2kmほどの距離を走らせてもらった際、強く感じたのは、跳ねるような反発力と、安定性の高さ。スピードを出そうとする意思にシューズが呼応するように、前へと押し出してくれる。そして、横ブレや不必要な沈み込みは感じなかった。最終的な仕上がりはまた違うかもしれないが、推進力を大幅に高めた《アディゼロ ジャパン 5》といった印象だった。
皇帝と呼ばれたハイレ・ゲブレシラシエ選手が初代《アディゼロ ジャパン》で、人類初のフルマラソン2時間3分台を記録したのは、2008年のこと。以来、2011年にパトリック・マカウ選手、2013年にウィルソン・キプサング選手、2014年にデニス・キメット選手、2018年にエリウド・キプチョゲ選手が、マラソンの世界記録を更新している。
そのうち、パトリック・マカウ選手、ウィルソン・キプサング選手、デニス・キメット選手の記録は〈アディダス〉のシューズで達成されたもの。 満を持して登場するカーボンプレート搭載の《アディゼロ プロ》が、どんな記録を生むのかが、楽しみだ。