股関節の痛みが取れません【ランの痛みの原因と解消法 vol.3】

走りたいのに痛くて続けられない。悩めるランナーに、痛みが出がちな5部位の対処法を教えます。今回は「股関節の痛み」。走る度に痛む太腿の付け根は、対処に適切な湿布を選ぶそう。ミネルバ先生が痛みの原因と解消を教えてくれます。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/ホセ・フランキー 取材協力/南出正順(稲毛整形外科院長)

(初出『Tarzan』No.775・2019年10月24日発売)

その湿布、効果なし?

先生 脚を引きずりながらいらしたDさん、だいぶ痛そうですね。

Dさん そうなんです。最近、走るたびに太腿の付け根が痛いんです。湿布でしょっちゅう冷やしているんですが、全然効果がなくて。

先生 どれどれ、ちょっと拝見。あ〜、この湿布はダメですね。

Dさん えっ、ダメですか?

先生 メントールやハッカ、アルコールが蒸発するときのスースーする感覚が得られるだけですから。その刺激でむしろ皮膚温は上がってしまいます。ロキソニンとかフェルビナクなどの消炎鎮痛成分が含まれているものがおすすめです。

湿布
湿布/冷感湿布はメントールなどの刺激で冷やされている気がするだけ。湿布を利用するなら消炎鎮痛成分配合のものを。

Dさん 分かりました。ランニングは続けても大丈夫ですか?

先生 そうですねぇ。股関節は再発傾向が高いので2週間くらいは様子を見ましょう。その間に、ストレッチをしてください。

Dさん ストレッチならしてます。ホラ、こんな感じで。

先生 ちょっと前屈してみてくれませんか?

Dさん だから今やってます。

先生 えーっ、それで前屈ですか! 人間跳び箱かと思いました!ハムストリングスが硬くて骨盤が後傾した姿勢で走っているから股関節に負担がかかっているんです。

Dさん ドキドキ、先生、もしやとんでもない病気では。

先生 いいえ、病名はありません。Dさん、あなたの股関節の痛みの原因は股関節の柔軟性不足です!

Dさん そうだったのか〜! ドキドキして損した〜!

先生 ベッドに横になってください。脚の付け根から引っ張りますね。えいっ!

Dさん うわぁ、ゴキッていった!

先生 股関節の詰まりを矯正しました。あとはカラダを休めてアイシングをしてくださいね。

Dさん 先生、2週間後には掌をベタッと床につけてみせますよ!

先生 楽しみにしてます。どうぞお大事に。

Dさん|ランの要の関節は骨盤の傾きでバランスが狂う。
股関節周囲には細かい筋肉が複雑に重なり合っている
股関節周囲には細かい筋肉が複雑に重なり合っている。どの筋肉に痛みが生じているかは特定しにくく、痛みが慢性化しやすい傾向もある。レストが肝心。

股関節は人体の中で最も大きな関節で、上半身の重みを引き受け、脚を前に運ぶランニング動作の要となる部位。

長距離ランなどの際、股関節が前傾しすぎていたり、逆に後傾していることで周囲のバランスが崩れて痛みが生じることも。長距離ランによる疲労で左右の筋力の差も大きくなるので左右どちらかの股関節に大きな負荷がかかる場合もある。

病名はつかないが、靱帯、関節包、神経組織が引き伸ばされて痛みが生じている可能性が高い。