なぜ30歳を過ぎると太るのか?運動生理学から読み解く3つの原因。
食べているものや量は昔と変わらないのに、30代を過ぎるとグッと体重だけが増えていくのは一体なぜ? そのカラダのメカニズムを知れば、減量のヒントになる!
text: Kano Ishitobi illustration: Sho Fujita cooperation: Kazushige Sasaki
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教えてくれた人
佐々木一茂(ささき・かずしげ)/東京大学大学院総合文化研究科准教授。筑波大学大学院体育研究科、東京大学大学院総合文化研究科修了。専門は運動生理学。加齢やトレーニングによるカラダの変化や健康との関連についての研究を手がける。
1.基礎代謝が減るから。
昔の写真を眺めてみれば20代までは今より明らかにスリム体型。自分は一生太らないと確信していたものの、30代に突入した頃からお腹のハミ肉がベルトの上に溢れ始め、ただいま順調に増殖中。
その理由のひとつは、基礎代謝が低下するから。基礎代謝は何もせずとも生きているだけで消費されるエネルギーのこと。およその内訳は下の円グラフの通り。
「基礎代謝は年齢を重ねるごとに低下していきます。原因は筋肉量が減る以外に、全体的にさまざまな生命活動の速度が少しずつ緩やかになっていくせいだと考えられます。1日当たりに消費するエネルギーが10〜20キロカロリー減ったとして、その少しの差が1年365日なら数千キロカロリー、さらに10年単位で考えたら数万キロカロリーになる計算になります」(東京大学大学院准教授・佐々木一茂さん)
基礎代謝の低下は加齢による宿命。太るのも道理というわけだ。

各臓器や組織が消費するエネルギーが基礎代謝量中に占める割合。最も比率が高いのは筋肉、次いで肝臓、脳と続く。加齢で筋肉が減り、生命活動が衰えることで基礎代謝量は低下する。
『文系のための 東大先生が教える 減量の科学』(NEWTON PRESS)より
2.そもそも食事の量が多すぎるから。

太る最大の原因は消費するエネルギーに対して摂取するエネルギーが多すぎることにある。余ったエネルギーはただちに体脂肪としてお腹まわりを中心に蓄積される。これは人類が長い間の進化の過程で身につけたカラダの仕組み。
人類が誕生してからの数百万年はほぼほぼ飢餓との闘い。食糧にありついたら余った分は脂肪として即、確保。食べられないときはそれをちびちび消費して生き延びてきた。食べ物が安定的に手に入るようになった現代はこのシステムが仇になり、ヒトは太ってしまうというわけ。
厚生労働省の基準のひとつに推定エネルギー必要量という考え方がある。一日に必要なエネルギー量の平均値で、エネルギーの不足や過剰のリスクが最も少なく、この数値を維持すれば太りすぎず痩せすぎず、健康に生きていけると推定される必要量のこと。これを上回る量のエネルギーを毎日摂り続ければ、ぽっこりお腹の出来上がり。落としどころを見誤ることが太る最大の原因。

横軸は習慣的なエネルギー摂取量。左の縦軸はエネルギー不足のリスク、右の縦軸はエネルギー過剰のリスク。ふたつのリスクが最も少ない落としどころが推定エネルギー必要量。
「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省)より
3.全体的に活動量が減っていくから。
推定エネルギー必要量は基礎代謝量×身体活動レベルという計算式で求められる。
身体活動レベルは3つのグループに分類されていて、レベル1は「生活の大部分が座位で静的な活動が中心」、レベル2が「座位中心だが職場内での移動や立位での作業、通勤・買い物・家事・軽いスポーツなどを行う」、レベル3は「移動や立位の仕事につく、または余暇に活発な運動習慣を持っている」というもの。
30〜40代で体重70kgの男性の基礎代謝量は1570キロカロリー。身体活動レベル2とすると、その指数は1.75。推定エネルギー必要量は1570×1.75=2747キロカロリーとなる。
ただし、この数値は減量中多めに見積もられやすい。実際の身体活動レベルはより低いと考えられる。
つまり第1は基礎代謝量の低下、第2はエネルギーの過剰摂取、そこに消費エネルギーの減少が加わって、人は簡単に太ってしまうのだ。


