フリーズした肩甲骨に3ステップのアプローチ
友岡和彦さん
教えてくれた人
ともおか・かずひこ/〈クリードパフォーマンス〉パフォーマンスディレクター。MLBで日本人初のヘッドストレングスコーチとして活躍。帰国後もトップ選手を指導。ATC、CSCS。
フリーズした肩甲骨の復活に有効なのは、3ステップでのエクササイズ。まずは「ほぐす」で肩甲骨周辺の筋肉を整える。次は「すべらす」で可動域を拡大。仕上げの「つなげる」で胸郭や肩関節とリンクさせる。
ほぐす
硬く弱くなっている筋肉を十分にほぐし、自在に伸縮させて肩甲骨を思い通りに動かせる状態に整える。とくに緊張しやすい僧帽筋上部、広背筋、肩甲挙筋などをターゲットにする。
すべらす
ほぐした筋肉をストレッチし、可動域を広げる。続いて肩甲骨を胸郭上で滑らせるために、スイッチを入れて活性化。とくにスイッチが入りにくい僧帽筋下部や前鋸筋に活を入れる。
つなげる
肩甲骨は固定するのではなく、ニュートラルに安定させることが重要。スイッチが入った筋肉でコントロールして、胸郭や肩関節とつなげながら、肩甲骨を安定的に動かす。
そして3ステップエクササイズを、3つのルーティンでパッケージ。
「集中して効果が上げられる最小限の量=ミニマム・ドーズは、5〜6種目ほど。3つのミニマム・ドーズに分割し、日替わりで行うと肩甲骨につねに新鮮な刺激が入り続け、飽きずに継続できます」(パフォーマンスディレクターの友岡和彦さん)
エクササイズの進め方
1週間でルーティンA、B、Cを1〜2日おきに1回ずつ行う。しばらく続けるうちに、肩甲骨の状態に応じて、自分にとくに適したエクササイズがわかってくる。
やったあとに、肩甲骨の動きが確実に良くなる実感が強い種目が、自らにフィットするもの。それが見つかったら、ルーティンの垣根を越えて、「ほぐす」「すべらす」「つなげる」の各カテゴリーに、それぞれ最低1種目をピックアップ。
マイベストルーティンを作り、週2〜3回続けよう。それが肩甲骨リカバリーへの最善の道だ。
このメニューを4〜6週間続けると肩甲骨の動きが軽くなり、首すじから背中にかけて無駄な緊張が取れる。それが肩甲骨復活のノロシだ。
Aのエクササイズ5種目
プレッツェル・ブリージング(左右各8回)
右向きで横になり、右膝を曲げ、爪先を左手で持つ。左膝を前に出して90度曲げ、右手のひらで膝を押さえる。胸を天井に向けて開き、後頭部を床につける。右手で左膝を押して動きの支点を作り、息を吸って吐きながら、左肩を床につけるように胸をさらに開いて肩甲骨を寄せ、呼吸をしながら5秒間(5カウント)キープ。左右を変えて同様に行う。
タオル・ショルダーオープン(12回)
両手で肩幅よりも広めにタオルの両端を持ち、両足を腰幅に開いてまっすぐ立つ。両腕を天井へまっすぐ伸ばし、両膝を軽く緩める。息を吸って吐きながら、肘を下げてタオルを頭の後ろでできるだけ低く下げ、肩甲骨を寄せて胸を開く。
ショルダー・Yホールド(12回)
床でうつ伏せになり、両腕をまっすぐ伸ばしてY字に開く。手のひらを向かい合わせ、親指を天井に向ける。顎を引いて額を床につける。両脚は腰幅でまっすぐ伸ばし、爪先も伸ばす。両腕を伸ばしたまま、肩と肩甲骨を下げて首を長く保つ(これで僧帽筋下部が働きやすくなる)。肩甲骨を下げて額を床につけたまま、Y字を崩さずに両腕を引き上げる。
スパイン・ショルダー・スイーブ(8回)
床で仰向けになり、両膝を腰幅で曲げて立てる。両肘を曲げて前腕を床につけ、手のひらを天井に向けて胸を開き、肘を脇腹に近づける。息を軽く吸って吐いて腰のアーチを潰しつつ、肘で床を押しながら、肩甲骨を上向きに回転させ、肘が床から離れない範囲で腕を高く上げる。肩甲骨を下向きに回転させながら元に戻す。
ウォール・スタンディング・エルボー・サークル(左右各8回)
左向きで壁際に立つ。左肩を壁すれすれまで近づけ、両足を腰幅に開いてまっすぐ立つ。両手を頭の後ろに添えて肘を左右に開き、左肘を壁につけないように注意しながら、左肘でできるだけ大きな円を壁に描くように、肘を前から後ろへ回す(後ろから前へ回すと胸が閉じやすい)。胸を開いて高く保ち、腰椎を捻らずに行う。左右を変えて同様に行う。
Bのエクササイズ6種目
広背筋に効かせるテニスボール・ロール(左右各20秒キープ+8往復)
右側の脇の下(広背筋)にテニスボールを押し当てて、床で横向きになる。右腕を床で伸ばして頭を乗せ、手のひらを正面に向ける。左手を胸の前につき、両脚を伸ばし、左脚を軽く後ろに引いて下半身を安定させる。ボールが沈み込む感覚が得られるまで、呼吸をしながら20秒間(20カウント)キープ。頭を起こし、右腕を床につけたままで、大きな半円を描くように上下させる。左右を変えて同様に行う。
胸筋に効かせるテニスボール・ロール(左右各20秒キープ+8往復)
左の鎖骨の下(大胸筋・小胸筋)にテニスボールを押し当てて、床でうつ伏せになる。左腕を真横に伸ばし、手のひらを床に向け、両脚を腰幅でまっすぐ伸ばす。頭を背骨の延長線上に置き、顔を床に向ける。ボールが沈み込む感覚が得られるまで、呼吸をしながら20秒間(20カウント)キープ。左腕を床につけたまま、大きな半円を描くように上下させる。左右を変えて同様に行う。
スパイン・ベントニー・ツイスト(3か所を各5往復)
バスタオルを筒状に固く丸め、輪ゴムで留める(食品用ラップの芯に巻くと、より効果的)。タオルを肩甲骨の下部に当てて仰向けになり、両膝を腰幅で曲げて立てる。両腕を左右に開いて肩甲骨を寄せ、手のひらを天井に向ける。タオルを支点として、両膝を左右の床へ交互に近づける。肩甲骨の中央、肩甲骨の上部にもタオルを当てて、同様に行う。
ウォール・ラテラル・サイドベンド(左右各20秒キープ)
左側を壁に向け、少し離れて立つ。右脚にクロスするように、左脚を前に出し、上体を左へ倒して両腕を壁に向かって長く伸ばし、指先で壁にタッチ。右側の体側をCの字にカーブさせて伸ばす。顔を右の天井に向け、胸郭をツイストして胸を開き、呼吸をしながら20秒間(20カウント)キープする。左右を変えて同様に行う。
コブラ(5秒キープ×6回)
床でうつ伏せになり、両腕を左右に伸ばし、手のひらを床に向ける。両脚を腰幅でまっすぐ伸ばし、顎を引いて額を床につける。肩を下げて首を長く伸ばし、肩甲骨を下げる。頭を下げたまま、肩甲骨を寄せて両腕を床から上げ、両腕を体側へ下げて肩甲骨を下向きに回す。両腕を外向きに回す外旋を行い、親指を天井へ向けながら、胸を開いて上体と頭を持ち上げ、呼吸をしながら5秒間(5カウント)キープする。
プローン・ショルダープレス(12回)
床でうつ伏せになり、顎を引いて額を床につける。両腕をY字に伸ばし、手のひらを向かい合わせて親指を天井に向ける。肩と肩甲骨を下げ、首を長く伸ばす。両脚を腰幅でまっすぐ伸ばす。頭を下げたまま、耳よりも高く両腕を床から上げる。肘を脇腹へ向けて引き下げ、肩甲骨を寄せて下向きに回す。
Cのエクササイズ6種目
僧帽筋上部に効かせるテニスボール・ロール(左右各20秒キープ+8往復)
左側の首と肩甲骨の間(僧帽筋上部)にテニスボールを押し当てて、床で仰向けになる。両腕を肩のラインで伸ばし、手のひらを天井に向け、肩甲骨を寄せて胸を開く。両膝を腰幅で曲げて立てる。ボールが沈み込む感覚が得られるまで、呼吸をしながら20秒間(20カウント)キープ。腕を床につけたまま、大きな半円を描くように上下させる。左右を変えて同様に行う。
ネック・ラテラル・ベンド(左右各20秒+20秒)
両足を腰幅に開いてまっすぐ立ち、右手の手のひらを、左の側頭部に当てる。左腕を背中に回して肘を曲げる。右耳を右肩に近づけるように、右手で頭を右側へ倒し、左の首すじ(僧帽筋上部)をストレッチ。呼吸をしながら20秒間(20カウント)キープする。次に、右下を見るように右手で頭を倒し、左の首すじ(肩甲挙筋)をストレッチ。呼吸をしながら20秒間(20カウント)キープする。左右を変えて同様に行う。
プローン・セラタス・プレス(10秒キープ×5回)
床でうつ伏せになり、両脚を腰幅で開いて爪先を立てる。両肘を肩の少し前でつき、三角形を作るように両手のひらを床につける。頭を背骨の延長線上に置き、顎を引いて顔を床に向け、肩と肩甲骨を下げて首を長く保つ。肘と手のひらで床を強く押して上体を起こし、肩甲骨を背骨から離して背中を丸め、呼吸をしながら10秒間(10カウント)キープ。
キャット&キャメル(8回)
床で四つん這いになり、両手を肩、両膝を股関節の真下につく。頭は背骨の延長線上に置き、肩を下げて首を長く保つ。両手と両肘で床を強く押し、肩甲骨を左右に広げて背中を丸め、ヘソを覗き込むように頭を下げて背骨を凸形にしならせる。顎を上げて目線を斜め上に向けながら、肩甲骨を寄せて背中を反らし、背骨を凹形にしならせる。
バット・オン・ザ・ヒール・チェストオープナー(左右各12回)
両手両膝を床について四つん這いになる。お尻を引いて踵に乗せて、左手を後頭部に添えて肘を真横に広げる。顎を引き、頭を背骨の延長線上に置き、肩を下げて首を長く保つ。腰椎の回旋を抑えてお尻を踵から離さないようにし、背骨を軸に胸を開いて左側へ向け、元に戻る。左右を変えて同様に行う。