湖でパックラフトを始めてみよう!|初夏のアクティビティQ&A
早くも暑くなり始めた都会を抜けて、気の置けない仲間と気楽に遊びたい。特に昨今話題のパックラフトで気の向くままに楽しめる“ちょいゆるアクティビティ”がおすすめだ!
編集・取材・文/門上奈央、佐井聡(トレイルカルチャー・ウェブマガジン『TRAILS』編集長) 撮影/石原敦志 取材協力/トレイルカルチャー・ウェブマガジン『 TRAILS』
初出『Tarzan』No.811・2021年5月27日発売
あっという間に完成するマイラフトで水上散歩。
仕事か食料の買い出しに出る以外は、ほぼインドアな毎日。たまには自然あふれる地に出かけて自由に遊びたい! そんな私の渇望に、パックラフトはしっくりハマった。
パックラフトとは?
バックパックに収納できるゴムボート。起源は諸説あるが、アラスカの荒野や山、川といった大自然を渡り歩く際に携行する“移動の足”として開発されたといわれる。重量3kg程度という軽量性と折りたたんで持ち運べるコンパクトさが最大の特徴。1艘を1人で乗るのが基本。
3kg程度しかなく、使用中以外は折りたためばバックパックに収納可能。ひょいと背負って湖に行けばただ眺望を見つめるだけでなく、自然の中に自ら飛び込んでいける。
「パックラフトはカヤックと比べて喫水(船体が沈む深さ)が浅く、平らな船底も特徴です。安定性があるので、最初に基礎知識を丁寧に押さえれば湖なら初心者でも楽しめます。富士山の眺めも素晴らしい本栖湖で、今回は漕いでみましょう!」(『TRAILS』の根津貴央さん)
教えてくれた人
湖で漕ぐ時のパドリングはシンプルで、左右交互に漕ぐことで前方向へ進み、片方だけ漕げば方向転換できる。小さなパックラフトで広い湖をマイペースに渡りながらハッとした。これ、幼い頃に憧れた“大冒険”の一コマみたい!!
パドリングに疲れたら手を止めて、プカプカと浮かんでみる。湖の静かな揺らめきを感じながら漂ううちに、湖と一体化しているような感覚に。パックラフトのおかげで山並みや視界いっぱいの空に囲まれて水上を漂流するという“非日常”を堪能できた。
初めてのパックラフトQ&A。
ツウ好みなツールゆえに、行う場所や必需品などが想像もつかないパックラフト。『TRAILS』編集長の佐井聡さんが徹底解説。
Q1. 初めてのパックラフト、最大限楽しむには?
A. 憧れの川旅に出る前に、まずは湖で練習しよう。
まずは湖でメロウに景色を満喫しながら漕ぐ練習を。湖ならば基本的に水の流れが少ないので、特別な技術がなくても楽しめる。静かな湖の上で、パックラフトならではの特別な浮遊感を味わってみよう。ただし、パックラフトは風の影響を受けやすいので、岸から離れすぎないように注意したい。
遊んだ後にそのまま湖畔でキャンプをするのも最高だ。東日本でおすすめなのが、富士山を目の前に望める本栖湖。湖畔のキャンプ場から直接湖に漕ぎ出すこともできる。静かで水もきれいで気持ちいい。西日本では西中国山地国定公園内にあり、西中国山地を見渡せる聖湖には無料のキャンプ場がある。標高約780mにある避暑地なので、夏でも比較的涼しく過ごせるのも魅力だ。
川旅をしてみたい人は最初はガイドツアーに参加しよう。流水でボートを操縦するには湖を漕ぐ時とは異なる技術と知識が必要になる。また川には初心者では想像できない危険も多い。ガイドツアーなどである程度の経験を積んだら、MYパックラフトで川旅に出かけたい。
パックラフトはたためばバックパックに入るので、電車やバスなどの公共交通機関を利用して出かけることができる。さらに歩き旅に持参して、途中で川が出てきたら、そこからは川下りをする、なんてことも可能だ。
流水でのパックラフトに挑戦できるツアー
川を下りたい人におすすめなのが、今回の旅でも使った〈アルパカラフト〉の代理店でもある〈サニーエモーション〉のガイドツアー。川下りの基本を遊びながら学べるツアーを開催している。初心者向けのコース「トレーニング&ダウンリバー」ではパックラフトの扱い方をはじめ、川下りの基本的な技術、川の危険に関する基礎知識も学べる。ツアーの開催地である長野県・安曇野では晴れていれば雄大な北アルプスの景色を眺めながら、パックラフトの川旅を体験できるはずだ。
Q2. パックラフト、どうやって組み立てる?
A. 専用の空気入れで膨らませるだけ。
空気を入れる際に使用するのは、インフレーションバッグと呼ばれる空気入れの袋のみ。これはパックラフト専用のもので、パックラフトを購入すると付属している。
まずはこのインフレーションバッグをパックラフトのバルブに接続する。続いて、インフレーションバッグに空気を溜め、開口部を閉じてカラダで押しつぶすようにして、パックラフトに空気を送り込む。この作業を何回か繰り返し、最後に直接口で空気を入れてパンパンに膨らませたら完成だ。
【パックラフトの組み立て方】
Q3. パックラフトにはどんな準備が必要?
A. 3つの必需品に加えて服装にも少し工夫を。
最初はガイドツアーなどのレンタルでいろいろ試してみよう。MYパックラフトを買うと決めたら、ライフジャケット(PFD)、パドル、ヘルメットも必ず購入したい。
PFDはウォータースポーツにおいては命を守るための必須ギア。どんなに緩やかに見えるところでも、湖や川において水難事故は起こり得る。PFDのサイズが自分の体型に合っているか、購入前に試着して確認するのも大事。
パドルは分割してパッキングできる4ピースのものがおすすめ。危険やSOSを知らせるホイッスルも携行しよう。ヘルメットは湖で漕ぐ分には必ずしもマストではないが、川では岩などから頭を守るための必需品だ。
服装は、濡れた際に低体温症にならないよう綿素材は避け、夏場でも速乾性の高い化学繊維や保温性のあるウールのウェアをインナーに、防風・防水性の高いレインウェアなどをアウターに着よう。着替えも忘れず用意すること。
靴はランニングシューズでもOK。サンダルであれば踵がしっかり固定できるものを。ケガ防止のために靴下は履くこと。
Q4. MYパックラフトを買うなら何がおすすめ?
A. 初級〜上級まで使えるスタンダードモデルを。
昨今さまざまなメーカーから出ているが、〈アルパカラフト〉と〈ココペリ・パックラフト〉は間違いない。〈アルパカラフト〉は、現代のパックラフトのオリジネーターで開発力に定評がある。
〈ココペリ〉は2014年にクラウドファンディングにより誕生した、新進のパックラフト専門メーカー。いずれもスタンダードなモデルを選べば初級〜上級まで使い続けられる。いずれ川下りに挑戦することも想定するなら、水の浸入を防ぐデッキまたはセルフベイラーが付いているものがよい。
※パドリングスポーツは水上で行う行為である以上、静水流水に限らず、状況によっては死傷の危険が伴います。事前に講習を受けるなどして、正しい知識と装備を持って行うことを強くお勧めします。今回の体験者も専門家の確認のもとアクティビティを実施しています。