• 「今が絶好調で青春の真っ只中」89歳のトライアスリート・稲田弘さんの運動習慣
COLUMN
2021.09.06

「今が絶好調で青春の真っ只中」89歳のトライアスリート・稲田弘さんの運動習慣

年を重ねるごとに元気になる運動習慣とは?|稲田弘さん

きっかけは60歳で始めた水泳。

総距226kmをスイム、バイク、ランで走破するアイアンマンに、76歳から(!)取り組む稲田弘さん。もともと運動はお得意でしたか、と尋ねると「全然です!!」と笑う。質問にかぶせるほど素早い返答と快活な人柄に、圧倒されるばかり。

稲田弘さん
稲田弘(いなだ・ひろむ)/1932年生まれ。稲毛ITC所属。昨年7月、アイアンマン世界選手権2016年(83歳322日)と2018年(85歳328日)の最高齢完走の記録でギネス世界記録に認定された。

運動を始めた年齢/60歳

頻度/週6〜7回

内容/週3日、所属しているクラブでバイクの練習をこなす。並行して、近所のスポーツクラブでスイム&マシントレ、もしくはロードでランニング。週1〜2回の自主練では、バイクで約60〜100km走るのが定番。

「中高と陸上部の短距離選手でしたが、いつも補欠。大学時代は山岳部で、重い荷物を背負って山を登ってました。昔から一つのことを長くしぶとくやり続けるのは得意でした。アイアンマンは長期戦なので、走る間はずっとカラダの使い方や姿勢、周囲の状況などを考える。睡眠中以外、僕の脳は働き詰めです」

健康のため60歳から水泳を始め、64歳でアクアスロンに出場。会場に自転車で来ていたトライアスリートに目を奪われ、マイバイクを購入。

「それからバイクに乗るようになり、70歳の頃にトライアスロンに初出場。アイアンマンデビューは76歳、制限時間オーバーで大失敗しました(笑)。でも最初からうまくいくわけがないと分かっていたので、士気が下がることはなかったです」

そこでオリンピアンも所属するクラブに入会。78歳で初めて出た世界選手権ではスイム中に過呼吸になり棄権するも、翌年開催の世界選手権で初めて完走できた。以後、9年連続世界選手権に出場している。

「いつまでやるんだと言われますが、まだ青春の真っ只中だと答えてます」

「完走を勝利とすれば、僕の戦績は3勝6敗です。気象的な要因や栄養補給の失敗で体調管理がうまくいかないと、完走できずに終わります。加齢による体力低下も当然感じます。

でもこれは人間の宿命でどうしようもない。それでもやりたいという気持ちが根底にあるから、挑み続けるにはどうすべきか考えるだけです。例えば筋力低下を自覚して筋トレを増やすと、前より進化したかもと感じる瞬間が必ず訪れます」

長くしぶとくやり続ける”スタンスが、こんな時に活きてくるのだ。

「アイアンマンは今の僕の全てです。お前いつまでやるんだとよく聞かれますが、まだやるよ、今が絶好調で青春の真っ只中なんだから、と答えています。でも自分としては案外ジョークでもない。ここまで物事に夢中になって取り組んで大きな喜びを味わったのは人生初めてだという実感が確かにあるんです」

カラダは日々変化するため、最適な練習法を常に模索。毎晩眠りにつく前に、明日はこんな練習をやってみようとアイデアが浮かぶという。

完走後の達成感を思うと、練習も心底楽しいです。今の目標は次の世界選手権での完走で、そのためにも今のペースを保っていきたい。突然ダメになるかもしれませんが、できる限り夢を追いかけていたいです」

取材・文/門上奈央 撮影/角戸菜摘

初出『Tarzan』No.811・2021年5月27日発売

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