「隔離ホテルで成人ビデオ視聴不可」|新型コロナ陽性&陰性者が語る④

なかなか情報を得づらい「PCR検査」や「新型コロナウイルス感染が発覚してからの生活」について生の声を取材。今回は、陽性と診断されたDさん(42歳・男性)が語ってくれた。

取材・文/井上健二 イラストレーション/沼田光太郎

初出『Tarzan』No.799・2020年11月5日発売

陽性でホテル隔離を体験。でもタバコはやめられない。

金曜夜に6人で飲んだ友人が発熱した。東京在住のDさんがそうメールで知らされたのは、月曜の朝。

「換気の悪いバーで、レインボーステッカー(感染防止徹底宣言ステッカー)も貼ってなかったし、スタッフもマスクをしていなかったので、“オレもヤバいかも”とビビリました。症状はないけど、同席した無症状の友人が自費でPCR検査を受けるというので、自分も受けました」

唾液によるPCR検査を受けたのは火曜。症状ナシだと100%自費なので、費用は3万5,000円。先に受けた友人が陰性だったので、自分も平気そうと油断していたら、翌日午前11時にクリニックから電話が入り、想定外の陽性を告げられる。

「マジか!」と思わず吠え、スマホを持つ手が軽く震えた。畳み掛けるように、クリニックから連絡を受けた保健所からの電話が鳴る。

「無症状なので、ホテルか自宅での10日間の隔離になります」

そう告げられたDさんは、迷わずホテル隔離を選ぶ。月曜から自宅でもマスクを着け、距離を保ったが、家族にうつせないと思ったからだ。ホテルの選択肢はなく自宅近くのホテルへの収容が決まり、翌木曜午後に都が自宅まで差し向けた黒塗りのワンボックスカーに乗り込む。

「到着後はホテルで軟禁状態。入り口が閉鎖されているので、コンビニにも行けません。前日までに申し出ると差し入れも認められますが、朝昼晩と3食お弁当がもらえたので、それでしのぐことにしました」

ビジネスホテルなのでWi-Fi環境はバッチリ。微熱以外にこれといった症状が出なかったDさんは元気そのもので、パソコンを持ち込んでリモートで仕事をこなした。無料開放されていたVOD(ビデオ・オン・デマンド)で好きな映画が楽しめたので、退屈はしなかったという。

「でもなぜかアダルトNGでした」

ホテル隔離生活で支給されたものなど
Wi-Fiにお弁当、それにVODと至れり尽くせり/お弁当の中身は飽きないように日替わり。決められた時刻に1階まで自分でピックアップに出向く仕組み。「それ以外にカップ麺も用意されていたので、1日1回食べたら10日間で2kg太りました」。ちなみに宿泊代と食費(カップ麺代含む)は無料だったという。

この間、貸与されるパルスオキシメーターで酸素飽和度、持参が求められた体温計で体温をそれぞれ朝夕2回測り、アプリに入力。それをチェックしたホテル常駐の看護師さんと、毎朝状況を話し合うのがルーティン。幸いにもほぼ無症状で推移し、10日後に無罪放免となる。

一緒に飲んだ6人から最終的に3人の陽性者が出たが、全員喫煙者だったとか。ならば禁煙を決意した?

「情けない話ですが、タバコもお酒もやめられない。次はレインボーステッカーを貼ったお店で静かに飲み、喫煙もほどほどにします!」