「味覚障害は衝撃的でした」|新型コロナ陽性&陰性者が語る①

なかなか情報を得づらい「PCR検査」や「新型コロナウイルス感染が発覚してからの生活」について生の声を取材。今回は、陽性と診断されたAさん(35歳・男性)が語ってくれた。

取材・文/井上健二 イラストレーション/沼田光太郎

初出『Tarzan』No.799・2020年11月5日発売

歩くのが辛いほどのダルさを感じ…。

「発熱なんて滅多にしないのに、突然熱っぽくなって。体温計がうちになかったので、仕事帰りに自宅近くのコンビニに駆け込み、1個残っていた体温計をゲットしました」

そう語るAさんが一人暮らしの東京都内の自宅に戻って測ると、38.6度。一晩寝れば治るだろうと楽観するも、翌朝体温は39度を超えた。

「どこで感染したのか、まるで心当たりがありません。でも、発熱に加えて頭痛もあり、ダルくて歩くのがしんどく感じたこともあり、腹を括って保健所に電話しました」

担当者に症状を伝えると、「これから都立H病院に行けますか? ただ地下鉄やバスは使わないでください」と教わり、タクシーを飛ばす。

「指示通りにER(Emergency room)の入り口で名前を告げると、テレビでよく見る防護服に身を固めた人が対応してくれて。自分がコロナとの闘いの最前線に放り込まれたと実感しました」

問診後、血圧と酸素飽和度を測った医師から「酸素飽和度は100%だから肺は大丈夫。仮に陽性でも軽症だから心配しないで」と言われ、ホッとする。最後に鼻から検体を取るPCR検査を行い、再びタクシーで自宅に戻り、検査結果を待つ。

まさかの味覚障害が衝撃的。 回復後は免疫強化に努める。

その日のうちに体温は37.5度まで下がるが、翌々日保健所から連絡があり、陽性を告げられる。保健所からは10日間のホテル隔離をリクエストされたが、仕事上どうしても自宅作業が欠かせない事情があり、自宅でのセルフ隔離を熱望すると、保健所はしぶしぶ認めてくれた。

他人にうつさないように完全防備でコンビニへ行き、10日分の食料を購入。以後10日間うちから一歩も出ず、誰とも会わない生活を続ける。隔離から2日で平熱に戻ったが、納豆ご飯と唐揚げを食べている最中に摩訶不思議な感覚に襲われる。味がまったくしなくなったのだ。

「これが噂の味覚障害か! とビックリしました。お腹は空きますが、何を食べても美味しくないので、それから1日1食になりました」

味覚も体調も回復し、10日後保健所から自宅軟禁解除が認められた。

今回Aさんが学んだことがある。

「思い返すと毎日仕事ばかりでロクに運動もせず、免疫力が落ちていたのだと思う。復帰後は週2〜3回近所の公園を30分ほど走り、免疫力を高める努力を続けています」