「防具の電子化が“スタイル”を広げ、 テコンドーはより奥深い競技になった」テコンドー選手・鈴木セルヒオ
text: Kai Tokuhara photo: Yuichi Sugita illustration: Shinji Abe
初出『Tarzan』No.797・2020年10月8日発売
日本人の父とボリビア人の母を持つ鈴木セルヒオ選手(-58kg級)は、弟の鈴木リカルド選手(-68kg級)とともに東京五輪出場が内定しているテコンドー日本代表の“顔”。
5歳の頃に家族でボリビアに移住してテコンドーを始め、本場・韓国の高校などで技術を磨いてきた彼に、2008年に初導入され、ロンドン五輪より現在の形になった電子防具について語ってもらった。
「電子化された当初は衝撃的でしたね。僕は当時まだ高校生でしたので順応しやすかったと思いますが、このセンサー内蔵のヘッドギアとボディプロテクターでテコンドーの競技性が大きく変わったと思います。電子化以前は審判の目と耳にポイントの判断が委ねられていたので印象点も多く、どうしてもスピードと瞬発力に優れたインパクトの強い選手が有利でした。
しかし今はセンサーが有効打のみを確実に感知してくれますので、きちんと打撃がヒットしないとポイントが入らない。だから逆に防御中心に耐えながらスタミナ勝負に持ち込んだり、相手の隙を縫ってコツコツとポイントを稼ぐチャンスも増えるなど、いろんなスタイルの選手が増えたように思います」
やはりどんなスポーツも時代とともに進化するもの。鈴木選手はこの電子防具とともに、近代テコンドーの主役を目指す。
「練習中から、このヘッドギアと防具を着けるだけで、本番さながらに緊張感がぐっと高まりますね。今は東京五輪が来年開催されることを信じて、しっかり勝てるように準備していきたいです」