「自分を守ってくれる、いわば“母親”のような存在です」(中長距離ランナー・戸田雅稀)
text: Kai Tokuhara photo: Yoshio Kato illustration: Shinji Abe
初出『Tarzan』No.786・2020年4月23日発売
「正直、アスリートの中ではシューズへのこだわりが強い方ではなく、最初に足を入れた時に“これいけそうだな”と感覚的に思えたものを選んで履いています」
1,500mを中心に、陸上中距離のスペシャリストとして知られる戸田雅稀選手。「ギアへの執着はない」ときっぱりと語る彼をして「これは特別」と言わしめるのが、アメリカのトップシェア・ランニングシューズブランド〈ブルックス〉の一足だ。
「〈ブルックス〉とは昨年サプライヤー契約をさせていただき、この《ハイペリオン テンポ》は今年2月から履いています。軽さと反発力を高いレベルで兼ね備えているところが、スピードが武器の自分の走りに合っていると感じています。試合ではスパイクを履くので、主にペース走や調整のためのジョギングで愛用しています」
試合用のスパイクと練習用のランニングシューズで選ぶ視点がリンクしているのかと思いきや、そこは意外にも別物だという。
「“蹴り”の感覚が全く違うので、それぞれに相互関係はなく、完全に履き分けています。自分の走力を最大限引き上げてくれるのがスパイクだとして、練習で履くシューズは足を守ってくれるもの。喩えるなら“母親”のような存在(笑)。その点でこれはアッパーのフィット感やクッション性にも優れているので安心感がありますね」
トラック上でのわずか4分弱の勝負。そのスタートラインに100%の力で立つための“ピーキングパートナー”が、戸田選手にとってのランニングシューズなのだ。