世界2,020足の数量限定。隈研吾がアシックスとランニングシューズをつくったわけ

2020年の東京五輪のメイン会場〈国立競技場〉の設計に携わった建築家の隈研吾さんが、ずっとデザインしたかったもの。それは、実に意外なことにシューズだ。

取材・文/門上奈央 撮影/鈴木大喜

(初出『Tarzan』No.777・2019年11月28日発売)

建築家・隈研吾がシューズを再構築!?

「履きたいものがなかなかなくて。軽量でありながら足が守られている、そんな一足をずっと作りたかったんです」

長年の夢が叶った。〈アシックス〉と手を組み、“より少ない力でより長く走る”をコンセプトとするランニングシューズ《メタライド》シリーズの限定モデル《メタライド アム(METARIDE AMU)》が完成!

「“守られている感じ”がするデザインを追求したのは、靴を“動く建築”だと考えているからです。僕は普段、舗装された道を走るだけでなく、岩だらけの現場にも行きます。どんなシーンで履いても癒やされる一足になりました」

隈研吾
隈研吾(くま・けんご)/1954年生まれ。建築家、東京大学教授。東京大学建築学科大学院修了後20か国以上で建築の設計に携わり、国内外で数々の賞を受賞。

ほっとするような履き心地の秘密は木材由来のセルロースナノファイバーを使用したミッドソールや、コルク材で成形した中敷きにあるという。

「木材は僕の作品にもよく使う資材だから今回使えてすごく嬉しい。大地と繫がることで人は安らぎをおぼえるものですが、靴は大地と人間を結ぶ接点となるものでしょう。足は生き物の一部、いつも自然と触れていたいんですよ」

これほどカラダと自然の繫がりに重きを置いて作られたシューズは珍しいのでは。

「今の時代における幸福はカラダの健康だと僕は思います。日々自然を感じて健康に生きていることこそ幸せだ、と」

《メタライド アム》は、ヘルシーでありたいという現代人に寄り添う一足となった。