初めてのランを全力サポート! 快適に走るための10のテク
ランの経験ありません。そんな人でも、走れるようになるんです! 「いきなり走らず、速歩きすることからスタート」から「走る間は歌い続けろ。歌が途切れたら必ず歩け」まで、ランニングトレーナーの牧野仁さんからアドバイスいただいた、10個のテクニック。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/エイドリアン・ホーガン 監修/鍋倉賢治(筑波大学体育系)、牧野仁(Japanマラソンクラブ代表)、<a href="/tags/kunihide_saito/">齊藤邦秀(ランニングフィットネスラボ代表)</a>
(初出『Tarzan』No.728・2017年10月12日発売)
目次
1. まずは1日8,000歩歩ける持久力をつける
日常生活で自分が1日何歩くらい歩いているか? 歩数計をまめにチェックしていない限り、それは意外と謎。
「とくに運動していないという人は、3,000〜3,500歩程度です。ゆっくり歩くときの歩数は1分間で約100歩、マックスの速歩きでおよそ140歩。100歩で30分歩いて3,000歩、多くても3,500歩というところでしょう」
と言うのはランニングトレーナーの牧野仁さん。
自宅から駅まで10分以上かかるときは自転車を使い、駅構内ではもっぱらエスカレーターを利用するとなると、全通勤プロセスで歩いている時間は2割以下。90分の通勤時間のうち30分弱。意外に人は歩いていないのだ。
「1日に30分しか歩かない人が、いきなり20分、30分走り続けるのは到底無理。意識的に歩く時間を増やして、7,000〜8,000歩歩く習慣をつけましょう」
まずはウォーキングの持久力アップからスタートを。
2. 欧米人並みに立ち続けられる体力を養う
電車に乗ったら座らないとソン!とばかりに空きシートに一直線。これでは持久力に必要な下半身の筋力は衰える一方。
「欧米スタイルの生活習慣では、日本人のように床の上に寝たり座ったりということをほとんどしません。基本的に椅子に座るか立つという生活なので、欧米人は立つことに抵抗がないのです」(牧野さん)
確かに、立食パーティーなどでずっと立ちっぱなしでへっちゃらなのは欧米人。隅っこに置いてある椅子に無意識に座ってしまうのは大抵日本人。
「体重をどちらかの足に乗せて立つと、腰に負担がかかり、疲れて座ってしまいがち。欧米人はお尻の筋肉をしっかり使って立っているので疲れにくい。股関節を外旋させてお尻に力を入れて立ってみてください」
なるほど、確かに疲れにくい。お尻はランの推進力。通勤中は空席があっても敢えて立ち、日常でも立つ時間を増やして持久力の底上げに繫げよう。
3. いきなり走らず、速歩きすることからスタート
走るとココロに決めたので、初日からいきなりがっつり走ってみた。初心者はこれ、厳禁。最初はペースが分からないのでスピードが上がりやすいということと、間違ったフォームが習慣化してしまうというのがその理由。パーソナルトレーナーの齊藤邦秀さんは速歩からスタートすることをすすめている。
「速歩きでは自然に前のめりの姿勢になり、斜め後ろに足が蹴り出されます。その延長で走り出すとピョンピョン跳ねずにスムーズに走ることができます」
初心者に多いピョンピョン走りによるエネルギーロスもこれで予防できる。
「歩くときは爪先をまっすぐの方向に出すことも重要。1軸ではなく2軸で前進しましょう。腕振りでは肩甲骨を動かし、骨盤の動きと連動させる練習も、ぜひ取り入れてください」
目印を決めて最初は速歩、たまにジョグ、また速歩に戻るというウォーク&ジョグから始め、少しずつジョグを増やしていくのが正解。
4. 初めの一歩は普通のスニーカーで問題なし
カタチから入らないとどうしてもやる気にならないという人は無理に止めない。が、走り始めて最初の1週間から10日間くらいまでは特別なウェアもシューズもはっきり言って必要ない。
ウォーク&ジョグの段階なら、カジュアルな普段着とスニーカー、なんなら通勤スーツだって構わない。いつやめてもいいもんね、というコソ練感覚で始めることが案外長続きさせるコツとなる。
これからの涼しい季節。LT(Lactate Threshold; 乳酸性作業閾値)を超えない範囲でウォーク&ジョグをしている限り、大汗をかくことはまずないはず。
通勤途中、速歩とゆるやかなジョグを繰り返しているうち、徐々に普段の脈拍スピードは落ちていく。それが自覚できたら持久力がついてきている証拠だ。
5. 走る間は歌い続けろ。歌が途切れたら必ず歩け
これまで運動経験がまったくないという人の場合、主観的運動強度でLTペースを維持しましょうと言われても、「これ楽なのか?」「ややきついのか?」「いやもうちょっと、自分いけるのか?」という判断に迷うことがあるかもしれない。
そこで、筑波大学教授の鍋倉賢治さんからの提案。
「分かりやすいLTペース、主観的運動強度が12〜13の目安は、走りながら普通に話せること。1分間自己PRをしてみるとか、趣味について話すとか、しゃべり続けられるかどうかが条件。その範囲で一番速いペースがLTレベルです」
話すネタが思いつかなければ、歌を歌いながら走ってもいい。ちょっとずつスピードを上げ、鼻歌程度の小声で歌い続けられるペースが見つかったらそれを維持。LTレベルのランが自動的に実践できる。
ただし、息が切れて歌が途切れがちになったらオーバーペース。いったんウォークに切り替えて仕切り直しを。
6. 20分走れるようになったら、シューズを購入
週に3回、ウォーク&ジョグのジョグ時間を増やしていくと、およそ2週間で20分続けて走れるようになるはずだ。このタイミングでいよいよランニングシューズに触手を伸ばそう。
といっても、最新機能搭載のガチシューズはトゥーマッチ。この段階でのシューズ選びのポイントはたったふたつ覚えておけば十分だ。
ひとつはヒールカップがしっかりしていること。簡単に潰れないヒールカップさえあれば、体重が前後に傾いてもホールドしてくれる。ふたつ目はミッドソール。程よい厚みがあり、ミッドソールが爪先よりも厚くなっているものが狙い目。ちなみにアッパーは硬めの方がベター。これだけ覚えてショップにGO!
7. 初心者は公園の周回コースを利用すべし
同じ場所をぐるぐる走るのが嫌いという人も、まず最初は街走りより広めの公園などの周回コースを走る方が断然おすすめ。というのは、
「街中を走ろうとすると、信号待ちや歩行者を避けなければならないので、どうしても歩幅やペースが狂います。曲がり角もほとんどは直角で急なので、加速と減速を繰り返すことになるからです」(牧野さん)
スピードを上げたり下げたり頻繁に止まったり。これでは、ペースを摑むことに慣れていない初心者にとってカラダへの負担が大きい。ここはやはり、公園の周回コースでまずLTペースをカラダで覚えることを優先させたい。
「家の近所に公園がないという場合は、道が広く信号や歩行者が少ない周回できるコースを探して、そこでペースを摑みましょう」
黙っていてもLTペースにフォーカスできるようになったら、満を持して街中へ飛び出そう。
8. 街走りに必須。知っておくべき信号待ちの作法
公園の周回コースから街走りに飛び出すとき、覚えておきたいのが信号にまつわるプチテクニック。
「遠くから信号を見て、青だったら減速します。じきに点滅して赤信号になることが多いからです。逆に遠くから見て赤だったら信号に着くまでに青に変わる可能性が高いので、マイペースで進みましょう」(牧野さん)
それでも、赤信号でいったんストップすることはどうしても避けられない。よくその場足踏みでペースを途切れさせまいというランナーがいるが、その場走りではペース維持に繫がらない。それよりは潔く止まってストレッチをする方が有効。また、
「信号待ちで一番前に立つと無意識に競争心が生まれるので、敢えてちょっと後ろに立って待ちましょう。青に変わったら急加速するのではなく、信号の真ん中くらいまでゆっくり歩いて速歩きから徐々にジョグへ。車と同じでギアを順番に上げていくことが大事です」
9. 30分ランができるようになったら水を携帯
さて、20分間連続して走れるようになったその翌週には、30分ランが苦もなく実践できているはず。ここまでくれば、目標の10km達成までそう時間はかかるまい。
で、ここからは今まで持たなくてよかった荷物がひとつ増える。そう、水分だ。
「走る時間が30分を超えたら、水分を携帯して走りましょう。小銭や交通系ICカードなどを持っていくという人もいますが、ウェストポーチやバックパックに水を携帯し、いつでも飲める状況にしておくとストレスもかかりません。理想をいえば水分は15〜20分ごとに口にしたいところ。でも、正確な時間をいちいちチェックすることもまたストレスに。なるべくこまめに水分を口に運ぶことを心がければOKです」(牧野さん)
10. 活動量計で心拍数&ペースを確認
10kmランというひとまずの目標クリアのために、やはり重要なのはペース配分。30分以上続けて走れるようになれば、自分にとってのLTレベルがどの程度なのかはある程度分かっているはず。
でも1時間を超える頃になると疲れも手伝って無意識にペースが乱れることも。たとえば、キロ7分というペースで走っているとして、あと10分でゴールというとき、我知らずペースが上がって最後までもたない、なんてこともある。
「オーバーペースの予防としては、心拍数にして130なら130という目安を決めて、その数値を超えないようにすること。ゴールに近い部分では頑張って、残り3分で150くらいになっても構いませんが、そこに行くまでは130をキープする。そのために、活動量計で心拍数を確認しながら走ることもひとつの方法です」(牧野さん)
ただし、活動量計は自分の体感と数値の確認手段。常時ガン見して数値に振り回されないことも重要。
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