「歩く」を鍛える「フィットネスウォーキング」はじめよう！

「フィットネスウォーキング」の第一歩は、「足を知る」。

「歩行は、移動手段でありながら、身近なエクササイズでもあります」と語るのは、アシックススポーツ工学研究所の市川将さん。バイオメカニクス的なアプローチで歩行を研究するスペシャリストである。

「フィットネスとしてのウォーキングの運動効果は、心肺機能と筋力の2つから捉えることができます」市川さんは、歩行の継続で心肺機能が上がると、持久力も向上して疲れにくくなるとも語る。

しかも持久力を養う時速5〜7kmを目安にした〝速歩〟を取り入れると、ランニングに近しい運動負荷になるのだとか。

「ウォーキングは、速度を上げると途端に運動強度が上がります。覚えておきたいのは、厳密な速度より、意識して速く歩くこと。それだけで格段に運動強度が上がります」

歩行は、筋力を含めた運動不足解消にも役立つ。「ランニングは運動効果も高く、手軽に実施できる運動の代表例ですが、着地の衝撃が大きく、スピードを上げるほど、運動不足の方や足腰に不安のある方の故障のリスクが高まります。ウォーキングであれば、故障のリスクを抑えられます」

市川さんによると、（同じ速度の）速歩とジョギングで筋活動量を比べると、太腿の裏側（大腿二頭筋）は、ジョギングもウォーキングもほとんど差がなく、ふくらはぎはウォーキングの方がむしろ高いという。

大きな筋肉が刺激されることで代謝も活性され、フィットネス効果も高まるのだ。ということで、さっそくフィットネスとして取り組みたい〝速歩〟。気を付けるべき5つのポイントについても、以下のアドバイスを貰った。

恐るべし〝速歩〟の効果なのだが、30～40代から徐々に歩行や足の形に変化が生じるという。そして、これらの変化が顕著になるのが50歳を過ぎた頃なのだとか……。

「50歳を過ぎて足の形が変わり、歩き方が顕著に変化する理由は、まだ解明されていません。長年の研究から、ホルモンバランスの変化が影響していると私たちは考えています」

市川さんによると、50歳を過ぎて歩く速度が落ちたり、外反拇趾になったり、足幅が広くなって靴がキツく感じることが増えるという。

「50歳というのは、あくまで統計上の話です。個人差があるので、早いうちから自分の足を知っておきたいですね。ひとつの指標になるのは、歩く速度です。同年代と比べて遅いか速いか、歩きながらチェックしてみてもよいかもしれません」

加齢による足の変化で最も多いのは、下の図で示した足の3つのアーチのうち、横アーチと外側縦アーチをサポートする筋力の低下により、足の小指の周辺が外側に張り出すという（カーブ足）。

結果として足幅が広くなり、今まで履いていたシューズがキツく感じることがある。

「そうした意味でも意識しておきたいのは、ウォーキングの際のシューズです。自分の足に合った靴を選ぶことを考えたいですね」

ますます歩行の重要性を理解したところで、市川さんが紹介してくれたのが、無理なくウォーキングを暮らしに取り込める以下の3プラン。

「この時、足指で地面を蹴り出して歩くことが大切です。足指が使えないと、筋肉が萎縮して、アーチが落ちる傾向があります。フィットネスとしてのウォーキングが定着したら、〝インターバルウォーキング〟に取り組みましょう。最初は億劫かもしれませんが、徐々に慣れてくるのもウォーキングの魅力です」

取材・文・編集／大田原 透　撮影／小川朋央　スタイリスト／高島聖子　ヘア＆メイク／天野誠吾

初出『Tarzan』No.889・2024年10月10日発売

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