「立っても疲れないカラダ」を作る3ステップ・エクササイズ
姿勢の乱れや緊張などでカラダが力んだ状態で立っていると当然疲れる。立っても疲れにくいカラダを作るには立ち姿勢で力みやすい筋肉をほぐし、体幹強化をするのが重要だ。仕上げに自分の姿勢で弱点となる部位をケアすれば、もっと立ちたくなるカラダが完成!
取材・文/石飛カノ 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 イラストレーション/AZUSA OKUMURA 取材協力/長谷公隆(関西医科大学リハビリテーション科教授) トレーニング監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ) 編集/阿部優子
初出『Tarzan』No.849・2023年1月26日発売
STEP① 立位で使われる筋肉をほぐす
上司に呼び出されてマイルドなお説教を浴びせられた後、ぐったり疲れた。これ、力んで気をつけ姿勢をとったがゆえの筋肉の疲れかも。
立位で使われる筋肉は脊柱起立筋と下腿三頭筋、そして中臀筋。力んで立つとこれらの筋肉はそれぞれの拮抗筋と同時に収縮を起こす。
リラックスして立っているときに脊柱起立筋が収縮すれば拮抗筋の腹横筋は伸展するが、どちらも同時に縮むから疲れを感じやすくなる。なので立っているとき疲れを感じたらとりあえずほぐそう。
(1)脊柱起立筋のストレッチ
両足を肩幅の広さに開いて立つ。両手を組んで肩の高さでまっすぐ前方に伸ばす。両膝を曲げ、顎を引いて背中を丸める。組んだ手と背中を引っ張り合うように。30秒キープ。次に右に上体を傾けて30秒、左に傾けて30秒。
(2)中臀筋のストレッチ
両脚をクロスさせて立ち、両手を腰に当てる。左右の爪先が正面を向くように。下半身のポジションはそのまま、ヘソを軸にして上体だけを右に傾けて30秒キープ。元に戻り今度は脚を入れ替えて、左に傾けて30秒維持する。
(3)下腿三頭筋のストレッチ
両足を前後に開き、上体を前傾させて両手を前脚の膝に置く。まず、後ろ脚の膝を曲げて体重を前脚にかけ、30秒間ヒラメ筋のストレッチを。逆脚も行う。
今度は後ろ脚の膝を伸ばして前脚に体重をかけ、ふくらはぎを伸ばす。30秒間イタ気持ちいい感覚をキープ。こちらは腓腹筋のストレッチ。左右ともに行う。
STEP② 腹圧を高める体幹トレで姿勢改善
体幹がぐにゃぐにゃで、電車の中で吊り革に摑まらないと、あっちにふらふら、こっちにふらふら。これでは正しい重心ラインを描けまい。立っても疲れないカラダを作るためには軸を保つこともまた重要。というわけで体幹トレも必須種目。
基本は片脚立ちで股関節と腕をダイナミックに動かしていく。いずれの動きも多裂筋、腹横筋、横隔膜、骨盤底筋群のインナーユニットが働いて脊柱がニュートラルに維持できてこそ実践できる。できる範囲の角度で地道に繰り返し。
(1)エアプレーン
右脚を軸にして立ち、両手で左の膝を抱える。股関節、膝、足首の角度は90度。両手を真横に広げ、左脚を後方に伸ばして頭から踵までをできるだけ床と平行に。ゆっくりと元の姿勢に戻り、この動作を30秒繰り返し。逆脚も行う。
(2)スタンディング・サイドリーチ
右脚を軸にして立ち、両手で左の膝を抱える。今度は両腕を右側にまっすぐ伸ばすと同時に左脚を左方向に伸ばす。両手の指先から左足の爪先ができるだけ床と平行になるように。元の姿勢に戻り30秒繰り返し。逆側も同様に。
(3)アーム&レッグローテーション
右脚を軸にして立ち、両腕を肩の高さで右方向に伸ばし、左脚の膝を外側に開く。膝の角度は90度。その状態から両手を逆方向に振り出すと同時に左膝を内側に引き寄せる。30秒繰り返し。軸脚を替えて同様に行う。
STEP③ 姿勢チェックで弱点を洗い出す
さて、ここまでご紹介してきたのは、あくまで正しい姿勢で立てている場合の基本ストレッチ&エクササイズ。
でも残念ながら、本来あるべき重心線を保って立っている人は案外少ない。何かしらの姿勢のクセによって、脊柱起立筋、下腿三頭筋、中臀筋という最小限の筋肉以外の部位に負担をかけているケースは極めて多いのだ。
まずは下の姿勢チェックでこれまで意識していなかった自分の姿勢のクセを洗い出す。最も代表的な3つの悪姿勢のいずれかに該当したら、姿勢改善ストレッチを毎日続けよう。
同時に姿勢チェックもこまめに行う。やがて立ち姿勢で疲れにくくなったと実感したら大成功。
チェックのやり方
壁の前に立ち、両足の踵を壁にくっつけて普段の姿勢をとる。頭、肩、お尻が壁に触れるのが正しい姿勢。頭と肩が浮いたら猫背、背中に掌2枚以上の隙間ができたら反り腰、頭とお尻の下部が浮いたら平背という悪姿勢。
【猫背】の人は胸のストレッチ
猫背で縮んだ胸を伸ばす。壁の横に立ち、壁側の手の掌を壁につける。逆の手は腰に当てる。壁側の足は壁に平行、逆足はやや前に出して爪先を外側に開く。そのまま上体を壁と反対方向に開いて30秒キープ。逆も同様に行う。
【反り腰】の人は大腿四頭筋のストレッチ
反り腰タイプは重心が前に傾くため太腿で支えようとする。ゆえに硬くなった大腿四頭筋を伸ばす。壁の横に立ち、右手を壁に当てて左手で左足を持つ。そのまま足を引っ張り、イタ気持ちいいところで30秒維持。逆も。
【平背】の人は大臀筋のストレッチ
平背の人は大臀筋が硬いために骨盤が後傾気味。よってお尻を伸ばす。壁の横に立ち、右手を壁につけて左足を右膝の上にクロス。そのまま腰をできるだけ落として大臀筋が気持ちよく伸びたところで30秒キープ。逆も行う。
長時間立つときは重心移動で疲労を防げ
本来あるべき重心ラインを維持して立つのは理想。
でもマネキンでもない限り、いつでもどこでもそれをキープして立つのは無理な話。とくに力んでいなくても長時間立っていれば、筋肉の同時収縮が起きて立ち疲れが生じる。
そこでおすすめしたいのが、疲れを予防するためにこまめに姿勢を変えること。骨盤を左右、または前後に揺らして重心を移動させる。または片脚立ちになって手足の末端をぶらぶら揺らすなど。
科学的根拠はないが、40分以上立ち姿勢を続けると筋肉の血流が阻害されるという説もある。これを防ぐためにもリラックスしてこまめにカラダを動かすのが正解だ。