ホルモンの分泌や代謝機能、体温や血圧のコントロール。これらはすべて体内時計によって地球の自転に沿ったリズムを刻んでおり、このリズムに反した生活を送れば、消化吸収や代謝のシステムが本来のように働かず、太りやすくなる。(詳しくはこちらの記事:なぜ夜更かしすると太る?「痩せるための体内時計」入門)
それでは、体内時計を整えるために何ができるのか。脳にある時計を“主時計”、肝臓や膵臓、骨格筋など多くの臓器や組織に存在する時計を“末梢時計”の2つの観点から、そのチューニング方法をご紹介しよう。
目次
① 起床後、遅くとも2時間以内に朝食を食べる
主時計は朝の光を浴びることでリセットできる。それでは頑張って早起きしてカーテンを開け、コーヒー1杯を飲んで仕事に直行。これ正解か不正解か? ブブー! 不正解。
その理由は、末梢時計をリセットする条件が朝食という刺激だから。主時計は確かに先陣を切って時計をリセットし、自律神経やホルモンを介して末梢時計に指令を送る。でもそれだけでは不十分。
食事で栄養素を直接カラダに届けることで、末梢時計のおのおのがリセットされる。光+朝食の刺激で初めて主時計と末梢時計の同調が起こるのだ。
「夜型の人が太りやすいといわれるのも、光と食事の刺激を同じタイミングで取り入れることが難しいからです。朝、光を浴びても朝食を摂れないと社会の時計と自分の時計が乖離していきます。理想は起きてから1時間以内、遅くとも2時間以内に朝食を摂ることが主時計と末梢時計を同調させる条件です」(体内時計研究の第一人者、早稲田大学の柴田重信教授)
体内時計はメインとサブの両方が働いてシステム全体が動き、日中のコンディションを支えてくれるのだ。
② 朝食の主食はマスト
朝食といっても朝にものを口にすればなんでもいいというわけではない。たとえば葉物野菜のサラダとコーヒーといったいかにもおしゃれ&ヘルシーそうな朝食では体内時計のリセットには役立たない。
何はなくともごはんやパンなどの炭水化物を確保することが朝食の第一条件。理由は以下の通り。
炭水化物はブドウ糖が連なったデンプンと食物繊維の複合体。このうち、デンプンは小腸まで運ばれ、消化酵素によってブドウ糖に分解されて体内に吸収される。すると、血中のブドウ糖の濃度が高まり、これをモニターしている膵臓からインスリンが分泌される。
何を隠そう、このインスリンが末梢時計のリセットを促してくれるのだ。朝、時間のない人は朝食用におにぎりやパンなどの炭水化物を前日に用意しておくこと。
③ 朝食のおかずは肉、魚、卵のいずれかで
では、炭水化物を摂ってもインスリンの出が悪いという糖尿病および予備軍の人たちは一体どうすれば?
「そういう人たちの体内時計はあまり狂っていません。調べてみると朝食でタンパク質を摂っていることが分かりました。タンパク質を摂ると肝臓でIGF-1というインスリンに似た働きをするホルモンが作られるのです」
朝食にタンパク質を摂るメリットは他にもある。
「朝のタンパク質摂取が筋肉の保持率を高めることが分かっています。高齢者を対象にした調査研究では、朝食でタンパク質を多く食べるグループと夕食でタンパク質を多く食べるグループでは、前者の方が握力が強く、筋肉が保持される傾向があるという結果が出ました」
朝のタンパク質が筋肉維持に繫がる
筋肉の維持は基礎代謝の低下を防ぎ、太りにくいカラダ作りの土台となる。ちなみに、タンパク質食材としておすすめなのは肉、魚、卵、大豆製品。穀類に含まれるタンパク質はあまり有効ではないので、主食と焼き魚、卵焼き、納豆などのおかずを組み合わせていただこう。
④ 一日の食事時間は12時間以内に
時間を無視したダラダラ食べで太ることは、経験的にみなご存じのはず。では、一日の食事時間を制限したらどうなるか? 複数の実験がその効果を明らかにしている。
一日の最初の食事から最後の食事を10時間以内にすると、3か月後には体重が低下した。また、9時間と11時間以内に設定した実験では、食事を始める時間が早いほど空腹時の血糖値が上がりにくくなったり、内臓脂肪量が減るといった報告がなされている。
摂食時間と肥満&メタボの予防効果
実際、同じ内容の食事をしても朝より夜の方が血糖値のピークが高く、しかも持続時間が長いことが分かっている。つまり、夜の方が太りやすい。これもまた、体内時計のリズムに関わりがあると考えられている。
「一日の食事時間を10時間以内にといってもなかなか守れません。現実的には朝8時に食べたら夜8時に食べ終わるという12時間摂食をおすすめします。その際は朝から日中の活動期にたくさん食べ、夜は早めに終わらせることが重要です」
⑤ 味噌汁にシークヮーサーを加える
朝食が大事なことは分かったけれど、なにせこれまで夜型ライフを送ってきた身、朝からガッツリ食べられない。
そんな人にぜひ、おすすめしたいのが沖縄名産シークヮーサー。なんとシークヮーサーに豊富に含まれるノビレチンという成分が朝の光と同じような働きをすることが分かっているという。
柑橘類の中でも青いシークヮーサーの果皮に飛び抜けて多く含まれているこの成分。果皮ごと搾った原液ジュースを味噌汁やスープにひと垂らし。この助っ人をお供にごはん半分からスタートすれば、体内時計リセット効果はかなり期待できる。
⑥ 朝食は和食がベター
柴田教授とAI食事管理アプリの『あすけん』が共同で行った調査によれば、朝食の内容と睡眠の傾向には密接な関係があることが分かったという。
「和食、和食と洋食が半々、洋食、シリアルまたは栄養補助食品、欠食という5つの選択肢を用意したところ、和食と答えた人々は早寝早起きの傾向があることが分かりました。
早起きだから和食を作る余裕があるのか、和食の朝食を食べているから早寝早起きなのか、相関関係は不明です。でも、結果的には和食の朝食で体内時計のリズムが整うのではと考えています」
朝食内容と睡眠傾向には関係がある?
また、和朝食では魚や納豆などのタンパク質食品を食べるチャンスに恵まれる。青魚に豊富な脂肪酸や豆類も体内時計リセットの因子になる。とくに脂肪分解を促す胆汁は朝一発目の食事で分泌されやすいので魚の脂肪酸の吸収もスムーズ。
さらに朝たっぷりのタンパク質補給で筋肉の維持効果もあり。コンビニ食品でも構わない。明日の朝食はおにぎり、焼き魚、納豆の和食に挑戦を。
⑦ 高濃度カテキン茶は夜に飲む
同じ食事をしても朝より夜の方が高血糖になりやすい。絶食時間を経た朝食時にはインスリンの分泌量が多く、その働きも強いので血液中のブドウ糖が組織に取り込まれるからだ。
ちなみに同じ絶食時間を経て夕食を摂った場合、やはり夕食時の方が血糖値が高くなる。これこそ体内時計が朝と夜で代謝をコントロールしている可能性が高いという証拠。
そこで、夕食時の血糖値上昇を抑えるために取り入れたいのがノンカフェインの高濃度カテキン茶。実験でも朝より夜のカテキン摂取で血糖値上昇がより抑えられたという。夕食のお供はお酒ではなくこちらで。