『日本バッティングセンター考』著者に聞いた、心躍るバッセン3選

編集/本田賢一朗 取材・文/黒田創

初出『Tarzan』No.831・2022年4月7日発売

カルロス矢吹 『日本バッティングセンター考』 FUNKY STADIUM宮崎

国内外のバッセンを訪ね歩いた集大成

野球への興味のあるなしにかかわらず、バッティングセンター(バッセン)を知らない人はいないはず。繁華街のビルの屋上やロードサイドにあって乾いた打球音が響くそこは、野球が国民的スポーツであることを表す原風景的娯楽施設だ。

しかしそれだけ身近な存在なのに、実態が語られることは今までほとんどなかった。

そこで国内外のバッティングセンターを訪ね歩き、取材したのが作家のカルロス矢吹さん。その集大成が『日本バッティングセンター考』である。

『日本バッティングセンター考』カルロス矢吹著
カルロス矢吹 『日本バッティングセンター考』

2,035円、双葉社刊

かるろす・やぶき/1985年生まれ。国内外のポップカルチャーに関する執筆活動を行う。「取材中、バッセンが隣にある学校に通っていた人に話を伺ったのですが、彼曰く、学校でどんなに先生に怒られても、ふと窓の外を見るといい大人が仕事をサボって球を打っている。そこで“先生の言うことがすべてじゃない”と中学生にして悟ったと。その話がすごく印象に残っています」。

「以前、東日本大震災で家族を亡くした男性が、唯一残された息子の願いを叶えるべく“地元の気仙沼にバッティングセンターを作った”という話を聞き、その人に会ってみようと思ったのが最初のきっかけ。話を聞くうちに、バッティングセンターはオーナーの人間力で成り立っていることを感じ、その思いの丈や歴史、発展の過程を調べたくなったんです」

日本初の施設は東京・錦糸町に作られたこと、栄枯盛衰が昭和40年代のボウリングブームと密接に関わっていること、アメリカには日本のような形態のバッセンはないことなど、矢吹さんは知られざる一面を次々と明らかにしていく。

そして、各オーナーが並々ならぬ思いで施設を維持していることも。

「最盛期の1970年代末には全国に1500店舗以上あったのですが、今は半分以下。残念ながら今後も減少傾向は続くでしょう。

でもなかには立派な施設を作ったり、気象条件の厳しい地域で貴重な運動施設としての役割を担っていたり、ユニークなアイデアで生き残りを懸けるオーナーさんもいる。

まだ夢のある世界なんですよ。僕は野球もバッティングセンターの空間も大好きなので、これからも通い続けたいと思っています」

そんな矢吹さんが心躍るバッセンが以下の3つ。家の近くのバッセン、たまには行ってみませんか?

① FUNKY STADIUM宮崎 (宮崎)

総工費3億円! 新世代の豪華設備

カルロス矢吹 『日本バッティングセンター考』 FUNKY STADIUM宮崎

「総工費3億円をかけて2019年にオープン。ピカピカで奥行きもあり、変化球はもちろん硬球も打てる。バッティングセンターの最先端です」

② バッティングセンターFull Swing (北海道)

日本最北! 真冬もガンガン打てます

カルロス矢吹 『日本バッティングセンター考』 バッティングセンターFull Swing (北海道)

「屋内型で外が大雪でも心置きなく打てるし、冬場の地域の貴重な運動施設という側面も。オーナーは隣でレストランを営んでいて、ご飯もおいしいです!」

  • 住所:北海道網走郡大空町東藻琴316-8
  • TEL:0152-66-2008
  • tonchintei.com

③ バンコクバッティングセンター (タイ)

海外にもある! タイ唯一のバッセン

カルロス矢吹 『日本バッティングセンター考』 バンコクバッティングセンター (タイ)

「近隣に多く住む日本人駐在員に加え、タイ人のお客さんも増えているそう。バンコクで球が打てるってワクワクしませんか?」

  • 住所:108,1 Sukhumvit 31, Klongton Nua, Wattana, Bangkok 10110 Thailand
  • haokasports.com