超人ボディビルダーの「究極まで鍛え抜いた、その先」
このマッチョな男性は、日本人で初めて世界最高峰のボディビル大会『ミスター・オリンピア』に出場した山岸秀匡さん。超人的な筋肉を誇る彼の筋トレヒストリーとは?
取材・文/門上奈央 撮影/石原敦志
初出『Tarzan』No.825・2022年1月4日発売
山岸秀匡さん
お話を聞いた人
やまぎし・ひでただ/1973年生まれ。ラスベガス在住。日本人初のIFBBプロボディビルダー。2007年より世界の最高峰『ミスター・オリンピア』に出場。自著に『筋トレは人生を変える哲学だ』。
生きるか死ぬかの筋トレはもうしません
「昔マッチョが登場する映画を好んで観た影響で、中学生の頃から腕立て伏せを中心に行っていました。筋肉がパンプする感覚が楽しく、みるみる胸筋がついた。“ベンチプレスをやればもっと筋肉がつくはず!”と思い、ウェイトトレを始めたのは高校生の頃です。高校3年間で60kg弱から80kgまで増量。大学在学時にボディビルの競技を始めました。初出場した翌年には優勝し、“次は世界だ”と」(山岸さん)
同時期、トップコーチのミロシュ・シャシブに出会い、渡米。
「学生時代から憧れていた大会『ミスター・オリンピア』に10回も出られたのは喜びです。まだ現役引退したわけではありませんが、2020年に出場したコンテストで一区切りつけました。かれこれ30年近く鍛えた影響で関節がかなり磨耗していて、これ以上ダメージを増やすと将来が心配なのも事実。今も毎日鍛えていますが、生きるか死ぬかといった筋トレはもうしていません」(山岸さん)
だいぶ抑えたトレーニングでそのカラダとは!
「健康のためにも適度な筋肉量は必要なので。最近はパンプさせる程度で終わります。さすがにカラダが小さくなるかと思いきや、体重の減少は5kg程度です。ある程度の体型を保てています。
それに、以前は少し歩くだけでも脂肪と筋肉のバランスの影響で足裏が痛くなりましたが、今は快適。前は“ボディビルダーは筋肉で人を驚かせることが仕事。普通の生活ができるようではプロじゃない”と冗談で言っていましたが…」(山岸さん)
今後やりたいことを尋ねると、山岸さんは「健康維持」と即答。
「あと最近ボクシングを始めました。ケガを避けるべく筋トレに専念していましたが、格闘技好きでずっとやりたくて。プロデビュー? それはもう結構です(笑)」(山岸さん)
コラム|日米のフィットネストレンド比較
「ラスベガスは一年中暑く、薄着になる機会が多いのでトレーニーが多い地域です。大手ジムチェーンは星の数ほどあり、どこも月会費も安くて設備も抜群。一つのジムに通うというよりは複数のジムに入会して使い分けている人が多い印象です。ロサンゼルスやカリフォルニアも依然人気ですが、生活コストが高いことからラスベガスに移るビルダーは少なくありません」(山岸さん)
では、アメリカと日本の2国を比べるとトレンドに違いは?
「筋トレのYouTubeについてアメリカはストーリー性が強いドキュメンタリー風が、日本はバラエティ番組調が多い印象です。それ以外ではアメリカだけの流行はほぼなく、ボディコンテストへの興味関心の程度やジムの設備などに差は感じません」(山岸さん)