「なぜ冒険するのか」を書に尋ねる。冒険家・荻田泰永さんが書店をオープンした理由
北極圏の単独徒歩行に挑み続ける冒険家・荻田泰永さんの〈冒険研究所書店〉。
取材・文/門上奈央 撮影/安田光優
初出『Tarzan』No.814・2021年7月8日発売
探検は“身体活動”だけではない。
「もともとこの場所は事務所で、去年春にコロナで学校が休みになった時に近所の子供に開放してたんです。ある日、この町には本屋が一軒もないのをふと思い出し、この子たちはどこで本を買うんだろう?と気になって、じゃあ私が本屋をやろうと。
本棚には冒険や旅を基軸とした小説や写真集、哲学書などを揃えてます。『世界最悪の旅』という本にある“探検とは知的情熱の身体的発露である”との一文に共感していて。探検は身体活動と捉えがちですが、見たい・知りたいという内面の働きが必ず伴う。
本を通して自分以外の人の思考や実例に触れて腹落ちさせる。その繰り返しで思考は鍛えられると思ってます」
最近、荻田さんは宗教や社会学など幅広い本を読むそう。
「私が読書するのは“自分が冒険を続けるのはなぜか?”という関心が根底にあるからかも。その答えは私の主観にはなく、一般論や他者の視点から辿れる気がするんです」
荻田泰永さんのおすすめの2冊。
『エンデュアランス号 漂流』アルフレッド・ランシング著 新潮文庫
南極大陸横断に出た探検家集団が道中で沈没。17か月の漂流期間を経て全員生還に至る、奇跡の旅の記録。「1914年に起きた出来事の裏側を辿る名作。探検の話ですが究極のリーダーシップ論としても楽しめます」(荻田さん)
『「空気」の研究』山本七平著 文春文庫
日本の社会を覆い、日本人の思考に根差す「空気」とは何かを説く。1983年の初版以来読み継がれる一冊。「空気は日本人の悩みのタネ。でも原理が分かれば「日本人とは何者か?」が見えてすっきりします」(荻田さん)
INFORMATION
冒険研究所書店
古本と新刊本、3000冊以上揃う。小田急江ノ島線桜ヶ丘駅東口を出てすぐ。
神奈川県大和市福田5521-7 桜ヶ丘小澤ビル2階
TEL:046-269-2370。
営業時間:10:00〜19:00(月曜休)