「いいシューズとの出合いが、自分を高みへ連れていってくれる」レスリング選手・太田忍
text: Kai Tokuhara photo: Yuichi Sugita illustration: Shinji Abe
初出『Tarzan』No.794・2020年8月27日発売
レスリング・グレコローマンスタイルの国内屈指の実力者である太田忍選手が愛用する〈アシックス〉のシューズは、何といっても鮮やかなゴールドがまず目を引く。
「常に1番を目指すという思いを込めて。リオ五輪以降このデザインにこだわり続けたことでレスリング界では“金色のシューズといえば太田”というイメージが定着しましたし、また60kg級で東京五輪代表に内定している長年のライバル、文田健一郎選手に勝った試合で履いていたという点でも思い出深い一足。
苦楽を共にしながら闘ってきたシューズは自分にとって相棒以上の存在。“いいシューズはいい場所に連れていってくれるもの”だと思っています」
もちろん機能面にも絶大な信頼を置く。
「フリースタイルと違ってグレコローマンは上半身だけでの攻防ですので、より二本足での踏ん張りが大事と言いますか、マットから下半身への力の伝達が重要になってくるのでグリップに優れたシューズが重宝するんです。これは特に踵内側のグリップがしっかりしているので得意な“ガブリ返し”を仕掛ける時にすごく生きてきますね」
余談だが、実は太田選手には試合に臨むうえでもう一つ大切にしているものがある。
「レスリング選手はシングレットの中に止血用のハンカチを忍ばせるのですが、僕は高校の頃に姉が“五輪に一緒に行こう”とメッセージを書いてくれた白いハンカチを今でも使っています。東京五輪の出場権は得られませんでしたが、現役選手でいる間はそのハンカチをずっと使うつもりです」