常識を覆す、スパイクピンのないスプリントシューズが誕生!
6月26日、アシックスからスパイクピンのない短距離用の陸上シューズ《メタスプリント》が一般販売された。
取材・文/神津文人
初出『Tarzan』No.790・2020年6月25日発売
シューズを根底から見直した結果。
“陸上スパイク”という言葉が一般的であることからもわかるように、スプリント用シューズにスパイクピンが付いているのは常識だった。
その常識を疑うきっかけになったのは、アスリートが発した「スパイクピンが地面に刺さる感覚がある」という言葉。しかし、陸上スパイクは、ピンを地面に貫入させ高いグリップ力を得ることで推進力を引き出し、スピードにつなげる。ピンをなくすというのは、シューズを根底から見直すことでもある。
新しいシューズ《メタスプリント》のコンセプトは「ピンの抜き刺しにかかる時間とエネルギーロスを減らす」というもの。既成概念にとらわれないシューズの開発が2015年に始まった。
建築などで用いられる、形状の製作ルールを定式化するパラメトリックデザインという手法を採用。その結果生まれたハニカム構造の複雑な形を、特殊な成型技術で具現化。プレートも突起部分もカーボン素材でできたピンレスのソールが完成した。このカーボン繊維を用いた成型技術は、世界最大規模のカーボン材料の展示会で、部門賞を獲得し、世界中の視線を集めている。
スパイクピンがトラックに刺さって抜ける時間を短縮し、エネルギーロスを減らした革新的なピンなしシューズ。着用選手が常識破りの記録を生むことを期待したい。