ミットは命のような存在です(プロ野球選手・小林誠司)
text: Kai Tokuhara photo: Go Tanabe illustration: Shinji Abe
(初出『Tarzan』No.766・2019年6月13日発売)
ミットを介したコミュニケーション。
「僕にとっては投手に気持ちよくピッチングしてもらうことが先決。だからこそミット選びはすごく大事です」と語る、球界屈指の強肩捕手・小林誠司。
ルーキーイヤーから高い盗塁阻止率を誇り、昨年までの3シーズンはセ・リーグトップの数字を記録。まさに球界屈指の強肩捕手といえる巨人の小林誠司選手だが、彼自身は捕手に求められるプレーの中で何よりもキャッチングを重視している。
「いいキャッチングができて初めて正確な送球に繫がりますので。それに盗塁を刺すことも大事ですが、僕にとっては投手に気持ちよくピッチングしてもらうことが先決。だからこそミット選びはすごく大事です」
愛用する〈ゼット〉の青いミットは市販モデルを改良したオーダー品。これ一個で数シーズン通しているだけあってかなり味が出ているが、この使い込まれた風合いにこそ小林選手の捕手としての矜持が宿る。
「ミットは捕手によって好みがかなり分かれると思います。ポケットが深かったり浅かったり、あるいは革の硬さや柔らかさも。
僕は投手が投げるボールの威力に負けないよう親指の部分を太くしつつ、その他の部分は手の感覚とハンドリング重視で薄めに作ってもらっています。体格やパワーで劣る分、ミットをバランスよく使いこなすことでカバーできればと。
僕ら捕手にとってミットというのは道具を超えた道具というか、自分の手そのものですし、野球選手としての“命”のような存在です。
今のジャイアンツの捕手陣は先輩後輩ともに実力者揃い。その中で毎試合出場してチームに貢献するためにも、このミットとともに守備力をさらに磨きつつ、今季は課題の打撃力も向上させていきたいです」