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囲碁史上初の七冠を2度達成した天才。棋士・井山裕太、勝つための5つの脳力

井山裕太さん

井山裕太(いやま・ゆうた)/囲碁棋士。5歳で囲碁を始め12歳でプロ棋士となる。20歳で史上最年少の名人に。2016年、26歳で囲碁史上初の七冠制覇および年間グランドスラムを達成。同年11月に名人位を逃すも2017年には2度目の七冠制覇を成し遂げ、2018年に国民栄誉賞を受賞。

26歳で棋聖、名人、本因坊など7つの囲碁タイトルを制覇した井山裕太さん。33年の人生で、この七冠というスーパー頂点に立つこと2度。一体この人の脳はどうなっているのか。長時間の対局を制する秘訣はどこに? 何手先まで読んでいるのか。そして運動はしているのか!? ハイレベルな相手との緊迫した勝負で勝つためには何が必要なのか。井山さんの勝利を支える5つの脳力キーワードを聞いた。

無の状態から構想を練る“俯瞰力”

白と黒の碁石でいかに陣地を広げるか、が勝敗を決める囲碁。このゲームには将棋のように相手の王将を獲るという明確な目的がない。言ってみれば、どこまでも自由。ゆえに序盤、中盤、終盤という流れの中で要求される“脳力”も異なる

「序盤は碁盤に何もない状態から始まるので、ひとつの対局の構想を練るというか、今日はこういう感じで行ってみようとまずイメージします。全体を広い視野で見渡す大局観、“俯瞰力”が必要です」

相手のある勝負だけに、思い通りの絵は描けない。勝負の中で折り合いをつけ、一局の碁を作り上げていく。それが俯瞰力だ。

過去の経験から候補手を探り出す“直感力”

「中盤は石同士が接近して相手との衝突が起きて戦が始まる局面。なので先を読む力とか判断力を駆使し、より神経を使う場面が増えます。頭のギアが一段階上がる感覚です」

どこに打ってもいい囲碁の着手の選択肢は広い。それでも瞬間的にいくつかの候補手を絞り込む。これが“直感力”。ヤマ勘ではなく長年の経験を土台にして導き出される直感だ。

今この瞬間の最善の一手を決断する“判断力”

次に直感で選択した候補手をひとつずつ検証していくのが「読み」。50手先は当たり前、多いときには100手先の展開を読んで候補手の可能性を探っていく。長考派として知られる井山さんだが、ただ長い時間を費やすのはこうした読みではない。

「読むのが難しいというより、候補手の中で着手をどれにするかという判断が最も難しいところ。悩みを断ち切るというか、結局判断に時間を費やすことが多いかもしれません」

いくつかの対策から最善と思えるただひとつの策を選択する。これは仕事にも人生にも共通する作業。

「正解は分からないけどそのとき何を選ぶかという基準は、私の場合、“この道で行ってみたい”という好み。リードしている局面とリードされている局面で、前者では安全策をとって勝ちたいと誰しもが思います。

でもそのちょっとした緩みが積み重なって次第にリードが少なくなって逆転されるということを何度となく経験しています。だからその局面で最善の手を選ぶのが自分のスタイルに合っているのかなと思います」

最終局面まで脳を稼働させ続ける“集中力”

そして迎える終盤。囲碁一局の一人の持ち時間は3時間または5時間、棋聖戦、名人戦、本因坊戦の三大棋戦では2日にわたる8時間。相手の持ち時間を合わせると、それぞれ倍の時間がかかる。

「それだけに終盤では脳に疲労が溜まってきます。脳がフレッシュな状態だったらありえないようなミスをすることも。なので終盤ではより“集中力”が必要とされます。

囲碁は自分と相手の陣地を争うゲームで、最も僅差の勝負を“半目差”と言います。そういうものを争う試合になったときは自分と相手の陣地を常に計算しているので、計算能力も問われます。陣地を計算しながらどのコースで行くのが最善かを考えるのは苦しい作業であることが多いです」

10時間以上かかる一局の間、ずっと集中力を維持するのは生理学的に言っても無理な話。よって盤の前に座ってはいても少し俯瞰して見ている状況も多いという。

「とくに序盤は最初からフルに脳を回転させているわけではありません。中盤以降、頭を使うと糖分が欲しくなるのでおやつを食べたりコーヒーを飲んで切り替えをしながら。すごく集中する時間は1時間につき半分あるかどうかくらいでしょうか」

ここぞという終盤の局面まで集中力を温存する。これもまた百戦錬磨で鍛え上げた集中力の調整技術。

自らのミスを認めて活路を開く“修正力”

さて、囲碁棋士を仕事に喩えると、自由裁量でライバル会社を凌ぐプロジェクトを成功させる責任者。では、コツコツ積み上げてきた企画の方向性に疑問を感じたとき、さてどうする? せっかく積み上げてきたものだからそのまま進めるか? 新たな方向性を模索するか?

「囲碁でも前に打った手を生かしたい、と思うことはあります。ちょっとまずいかなというとき、今まで積み重ねてきたものを貫き通すか軌道修正をするか。軌道修正はこれまでの自分の非を認めるということなので辛い作業です。

盤上には自分の打った手が残っているので嫌でも目につきます。でもそこにこだわるとミスを引きずっていい判断ができなくなる。非は非として受け入れる“修正力”も必要です

井山裕太さん

かくして誰にも真似できない独創的な着手が生み出される。実は運動もそのひらめきにひと役買っているという話。

「ランニングマシンで走ったりチューブトレーニングをしたりするくらいですけど。運動を取り入れるきっかけとして、脳にいい影響があるというのはもちろんありました。走ると海馬が大きくなるという話をちらほら聞いていたので。

今後、世界で戦うためにも運動でコンディションを整えていきたいと思っています」

取材・文/石飛カノ 撮影/福森クニヒロ

初出『Tarzan』No.850・2023年2月9日発売

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