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体の疲れを癒やす入浴法は「40度×20分」

温泉に浸かるサル ヒートショックプロテイン

浅い眠りや睡眠リズムの乱れを放置すると、疲れはいつまで経っても取れない。そこで役立つのHSP(ヒートショックプロテイン)。なんとお風呂に入るだけで手軽に増やせるのだ。

リカバリーを促すタンパク質「HSP」

カラダには、ストレスでダメージを受けると、そこからリカバリーする回復力がある。それを細胞レベルで担う機能の一つが、HSP。HSPは、「ヒートショックプロテイン」の略。熱などのストレスにさらされると細胞で合成されるタンパク質のグループを指している。

筋肉や血管などカラダを作っているのは、タンパク質。また、酵素や免疫を担う抗体も、タンパク質だ。どのタンパク質も、決まった構造を持つと、本来の機能が発揮できる。HSPは協力して、ストレスで傷ついたタンパク質に寄り添って癒やし、立ち直る手助けをしている

HSPには多くの種類があるが、なかでも疲労回復に深く関わるのは、HSP70。HSPのなかでタンパク質のリカバリー作用がもっとも高い。

疲労解消には質の高い眠りが不可欠だが、HSP70を脳の視床下部付近に投与すると、深い眠りである徐波睡眠が増えると報告されている。

「視床下部は、自律神経ホルモン分泌のコントロールを担う。興奮を抑えてストレスを和らげる神経伝達物質GABAをキャッチする受容体もあります。HSP70は視床下部の機能に何らかの形で働きかけることで、深い眠りへ導くと考えられています」(大塚製薬・原科彩さん)

HSP70は深い眠りを増やす

HSP70は深い眠りを増やしてくれる/休息モードになる5分前の鳩6羽の視床下部付近にHSPを投与。対照群と比べると、脳波などの解析から深い眠りが増えることがわかった。また、脳の視床下部にあるGABAの受容体が働かなくなる薬剤(ビククリン)を一緒に投与すると、HSP70が徐波睡眠を増やす効果は有意に低下。Doki Biol Sci. 2013 Mar; 449: 89-92 *p<0.05、**p<0.01、#p<0.05、##p<0.01、###p<0.001

HSP70は40度×20分入浴で増やせる

ならば、HSP70を増やすには、一体どうしたらいいのか。方法は大きく2つある。

一つ目は、適温のお風呂に長めに入ること

40度のお湯に20分全身入浴すると、2日後にはHSP70が有意に増える。のんびりお風呂に入ると、疲れが吹き飛ぶ感じがするが、それには血行促進などの入浴効果に加えて、HSPが一枚嚙んでいるのかも。

42度のお湯に5分間全身入浴した場合と、40度のお湯に20分間全身入浴した場合の、血中HSPの発現率比較グラフ

お風呂にゆっくり入ると、2日後にHSPが増える/健康な男性11人が42度のお湯に5分間全身入浴した場合と、40度のお湯に20分間全身入浴した場合の、血中HSPの発現率を比較。後者では2日後にHSPが有意に増えた。株式会社バスクリン、修文大学健康栄養学部(伊藤要子教授)の研究結果より

社会的時差ボケに有効なアスパラプロリン

もう一つは、アスパラガスの茎を加工処理した食品素材「アスパラプロリン」を摂ること。アスパラプロリンを含む食品を摂取すると、HSP70を増やす遺伝子の発現がアップ。血中のHSP70が増えてくる。

アスパラプロリンは、アスパラガスの茎を特殊な方法で加熱・酵素処理して得られる物質。残念ながら、アスパラガスを食べても、アスパラプロリンの摂取にはつながらない。アスパラプロリンを配合したサプリメントが発売されているから、気になる人は早速ネット検索してみよう。

さらにアスパラプロリンには、眠りのリズムを整える働きもある。

眠りのリズムが乱れると、疲れは取れにくい。最近増えている乱れが、「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」と呼ばれるタイプ。平日忙しくて睡眠不足に陥ると、休日の寝溜めで足りない眠りをカバーしようとしがち。そこで生じやすいのが、社会的時差ボケ

平日と休日の就寝・起床リズムのズレにより、時差ボケしたときのように体内リズムが崩れて週明けに眠気や疲労を強く感じるのだ。しかし、先の成分摂取で休日の朝寝坊が軽減したことから社会的時差ボケにも有効と考えられる。

取材・文/井上健二 取材協力/大塚製薬

初出『Tarzan』No.831・2022年4月7日発売

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