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知れば整えたくなる! 7つのトピックで学ぶ「腸内環境の最前線」

腸内環境の最前線

去る2022年2月15日(火)、ターザン編集部主催、沢井製薬協賛のもと、「腸内環境」を深く知るためのトークイベントが開催された。語られたトピックは、日々の健康を意識する上で、知っておきたい内容ばかり! この記事では、そのイベント内容をお伝えする。

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ターザン×沢井製薬で腸活トークイベントを開催!

沢井製薬Presents 腸内環境 最新トピック7 〜その常識はもう古い? 腸内環境の最前線〜」と題したトークイベントが、『ターザン』編集部主催、沢井製薬協賛で開催された。

出演者は、腸内環境研究のトップランナーである福田真嗣先生と、“腸活おばけ”の愛称でも知られる美腸プランナーでモデルの加治ひとみさん。

加治ひとみさんと福田真嗣先生

・加治ひとみさん(かじ・ひとみ)/1987年生まれ。28歳で芸能界デビュー。モデル業も始めた30歳以降、腸活とピラティスで育んだ美ボディで注目を集める。フォトブック『かぢボディ。腸活こそ、最高の美容液』も好評発売中。・福田真嗣 先生(ふくだ・しんじ)/1977年生まれ。慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授。明治大学大学院博士課程を修了後、理化学研究所などを経て現職。2015年にメタジェンを設立。腸内環境研究の第一人者。

ここではトークイベントで展開された7つのトピックスを記事としても紹介! 太りやすさ、免疫力、スタミナにも関わるという腸内環境の常識をアップデートし、最新の研究を踏まえてお腹のなかから心身のコンディションを良くするヒントを探ろう。

イベントの様子はこちら!

①「腸」から読み解く、カラダづくりで「個人差」を踏まえるべき理由

腸内環境の最前線

腸内環境を左右しているのは、腸管(小腸と大腸)内に棲みついている腸内細菌だ。

ヒトを構成している細胞は約37兆個。それに対して腸内細菌の数は、40兆個くらいと言われている。それぞれの細胞の大きさこそ違うものの、私たちはカラダの細胞数を上回る腸内細菌たちと日々を過ごしている。その種類は一人あたり1000種類ほど。このうち、人類が共通して持っているのはおよそ16%、160種類と言われており、残りの84%はみんな異なっている

ヒトのゲノム(全遺伝情報)は、人種や住む環境が違っても、約99.9%が一致している。ところが、腸内細菌の種類やバランスには、個人差が極めて大きく、ゲノムが同じ一卵性双生児でも違う。腸内細菌を含む便を、最先端の技術で分析すると、腸内細菌で個人特定ができるほどだ。

ダイエットもトレーニングも、一人ひとりの「体質」に合わせて行うことが重要だが、その「体質」の背景には腸内細菌の個人差が隠れているようだ。

腸内は「体外環境」なので変化しやすい

腸内細菌が棲みつく腸管を含め、消化管は口から肛門まで継ぎ目のない1本のチューブのようなつくりをしている。誤って飲み込んだ異物が肛門からそのまま出てくることがある事実からもわかるように、腸管を含めた消化管の内部はカラダの外とつながった「体外環境」、つまりカラダの外側である。

腸内細菌は、腸管の表面を覆う粘液層のなか、いわばカラダの外側と内側の境目に棲んでいるため、様々な要因で変化しやすい。腸内細菌の個人差を生んでいるのは、私たちの生活習慣(ライフスタイル)。それは、腸内細菌にとっては体外環境の違いに他ならない。

なかでも大きな影響を与えるのは、どんなものを口から入れているかという食習慣だ。腸内細菌は、消化されずに腸管まで届く成分を餌としているため、食物繊維は腸内細菌のバランスを左右しやすい

トークイベントこぼれ話

●腸内細菌は腸内で様々な代謝物質をつくり出しており、その一部は体内に吸収されて多様なインパクトを与える。腸内細菌の成分の一部が、体内に入って免疫細胞などに作用することもある。このように、腸内細菌とその代謝物質の両方が人体に影響を与えることから、それらを含む腸内環境全体が重要とされている。

② 腸内環境は人間の「脳」にも影響している!?

腸内環境の最前線

近年、脳と腸管の相互作用をさす「脳腸相関」が注目されている。

実際、脳でストレスを感じると便通が乱れることもあるし、腸内環境のバランスが悪くなると脳疾患につながる可能性も指摘されている。腸管と脳はかなり離れているが、迷走神経とホルモンで連絡しているのだ。

なぜ腸管と脳は連絡しているのか。それには深い理由がある。

もともと動物は、腸管は持っていても、脳は持っていなかった。自ら栄養をつくり出せる植物と違い、動物は他の生き物を食べて栄養を得ている。そのために脳よりも先に進化したのが、栄養を消化して吸収する腸管。腸管は本来、脳がなくても、自律的に働ける器官だ。現在でも、脳を持たない動物はいるが、腸管を持たない動物はほとんどいない。

原始的な動物では、腸管は自律的に活動しているが、動物が進化して脳が誕生すると、腸管は脳とも連絡するようになった。よく「腸は第二の脳」と言われるが、こうした経緯を踏まえると「脳は第二の腸」と言うべきなのかもしれない。

トークイベントこぼれ話

●脳の疾患である自閉症やパーキンソン病に関しては、腸内環境のアンバランスが発症のプロセスに関わっているという指摘も出ている。腸内環境のバランスをコントロールして整えることで、こうした脳疾患の改善や予防につなげようという研究も始まっている。

③「太りやすい/太りにくい」に影響するのは本当だった!

腸内環境の最前線

デブ菌」とか「瘦せ菌」といった言葉が話題になる機会が増えてきたが、本当にそのような腸内細菌は存在するのだろうか?

近年の研究によると、腸内環境が「太りやすい/太りにくい」に関わっていることは間違いないということが分かってきた。一方で、「デブ菌」や「瘦せ菌」のように、万人にとって「太りやすい/太りにくい」を決める特定の腸内細菌がいるわけではない、ということも分かってきた。

それよりも、お腹で腸内細菌がどのような代謝物質を作り出すかが重要なようだ。なかでもポイントになるのが、短鎖脂肪酸。短鎖脂肪酸とは、酢酸プロピオン酸酪酸などのこと。ある種の腸内細菌は、水溶性食物繊維などを原料に短鎖脂肪酸をつくり出す。

短鎖脂肪酸がさまざまに作用する

短鎖脂肪酸は、腸内細菌にとっては不要なもの。だから、彼らは排出するのだが、この短鎖脂肪酸が腸内で吸収されると、カラダの中でさまざまな効果を発揮する。

まず、短鎖脂肪酸は腸管からGLP-1というホルモンの分泌を促す。GLP-1は、脳に働いて食欲を抑えてくれるから、食べすぎによるカロリー過多が避けられる。さらに、腸内細菌がつくった短鎖脂肪酸が吸収されると、全身の代謝に関わる交感神経の働きが活性化されて代謝がアップ。代謝が上がると、太りにくくなる。

また短鎖脂肪酸には、腸管のバリア機能を高める働きもあり、それも「太りやすい/太りにくい」に関係する。カラダの外側である腸管の内腔と、カラダの内側である腸管の内部を隔て、悪いモノが体内に入らないようにしているのが、腸管のバリア機能。腸内細菌はその担い手だ。

短鎖脂肪酸が不足してバリア機能が下がると、本来なら体内に入らないようにブロックされている腸内細菌の代謝物質などが侵入する。その刺激で瘦せるために必要なGLP-1などのホルモンが作られなくなると、太りやすくなってしまうのだ。

トークイベントこぼれ話

●短時間で腸内環境を劇的に変える方法に「便微生物叢移植療法」がある。通称「便移植」。「便移植」で肥満者の腸内細菌を含む便を移植すると、移植された側は太りやすくなる。血糖値を下げるインスリンというホルモンの効き目が悪いのは肥満の一因だが、瘦せた人の腸内細菌を含む便を移植すると、インスリンの効き目が良くなり、痩せやすくなったという臨床研究もある。

④ 腸内細菌のバランスを整えると、なぜ「免疫力」まで上がるのか

腸内環境の最前線

新型コロナウイルスの感染蔓延で改めてスポットライトを浴びているのが、「免疫力」。「免疫力」とは、有害な微生物などの外敵から、カラダを守る仕組みのこと。腸内細菌は、この「免疫力」とも深く関わっている。

お母さんのお腹から生まれた当初、子供の「免疫力」はまだまだ不十分な状態。地上にはさまざまな微生物が存在しており、これらの微生物に晒されている間に、「免疫力」は徐々に鍛えられていく。

腸内細菌もまた、ヒトの「免疫力」の教育係的な存在である。なかでも腸内細菌がつくり出す短鎖脂肪酸が、教育上でも大きな役割を果たしている。

腸管は、カラダの外側と内側の国境地帯に相当している。このため、外敵が体内に入らないように、「免疫力」の中核を担う免疫細胞がたくさん集まっている。腸管表層の粘膜で待機する免疫細胞は、外へ向かって免疫グロブリンA(IgA)というタンパク質(抗体)を分泌している。IgAは、外敵とくっついて、体内に入らないように水際で防ぐ働きがある。

このIgAをつくる免疫細胞を活性化してくれるのが、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸。短鎖脂肪酸により腸内で大量に分泌されたIgAは、全身へも広がり、体外環境と接する目や鼻、口や気道などの粘膜で外敵を待ち構えて「免疫力」をアップしてくれる。

トークイベントこぼれ話

●インフルエンザや新型コロナウイルスなどのワクチンは、毒性のない形に変えたウイルスの一部を体内に入れ、有害な外敵の存在を安全に免疫細胞に教えて「免疫力」を高める。そこで増えるのは免疫グロブリンG(IgG)という抗体。体内に侵入した特定の外敵と結合して無害化してくれる。ウイルスなどの外敵と戦うには、IgAもIgGも両方大切だ。

⑤ 持久力が10%向上する!? 運動機能との驚きの関係

腸内環境の最前線

腸内細菌は、運動能力とも関わるという研究結果がある。なかでも目を向けたいのは、持久力との関連だ。

駅伝選手と同年代の普通の人の腸内細菌を比べると、駅伝選手には「バクテロイデス」という腸内細菌が多いことがわかった。より詳しく調べると、同じ駅伝選手でも「バクテロイデス」が多い方が、持久力の指標である3000m走のタイムが良いことも判明した。

持久力が高まる秘密は「バクテロイデス」が腸内でつくり出す短鎖脂肪酸

長距離を走ると運動のエネルギー源が消耗し、やがて涸渇してくる。そのときにエネルギー源になってくれるのが、「バクテロイデス」がつくり出す短鎖脂肪酸なのだ。この短鎖脂肪酸は一種のバックアップとして役立ち、それによって途切れなくエネルギーを供給できるので、結果的に持久力が上がると考えられる。

バクテロイデスを増やすには「α-シクロデキストリン」

「バクテロイデス」で持久力を上げたいなら、積極的に摂りたいのはオリゴ糖の一種である「α-シクロデキストリン」という物質。「バクテロイデス」は、「α-シクロデキストリン」を利用して短鎖脂肪酸を合成してくれる。

一般の方に2か月間、「α-シクロデキストリン」を摂ってもらったところ、「バクテロイデス」が増えていることが判明。さらに、固定式自転車(バイクマシン)を10km漕ぐテストをした結果、タイムが以前より約10%向上(!)。さらに「運動した後にどのくらい疲れたか」という主観評価の試験をしたところ、疲労感が軽減することもわかった。

トークイベントこぼれ話

●「α-シクロデキストリン」とは、ブドウ糖6個が輪のように連なった環状オリゴ糖の一種。難消化性であり、食物繊維と同じように腸管まで届く。特定の食品から摂るのは難しいが、インターネット上ではサプリメントとして「α-シクロデキストリン」を購入できる。

⑥ 腸内環境のベースは3歳までにフィックスする?

腸内環境の最前線

お母さんのお腹にいる胎児の腸内は無菌環境。生まれるときに、赤ちゃんはお母さんの腸内細菌を受け継いで、お腹のなかで腸内細菌が増えていく。

その後、子どもの免疫系の成熟が進み、お母さんなどから引き継いだ腸内細菌とやり取りを重ねるうち、3歳前後までには「そのまま棲み着いてもいい」という免疫系の許可を得た腸内細菌だけが定住する。それが、その人特有の腸内細菌バランスの土台をつくっている。

腸内細菌同士は、腸管内の限られたパイを争う生存競争を繰り返しており、腸内細菌の定着には、どんな食品を日常的に食べているかという食文化が与える部分も大きい。

たとえば、多くの日本人の腸内には、海苔の成分を分解できる遺伝子を持った腸内細菌がいる。日本人は海苔などの海藻類をよく食べるので、海藻類の食物繊維を分解できる腸内細菌が定着しやすくなったのだろう。海藻類をあまり食べない欧米人では、そうした腸内細菌は定着しにくい。

トークイベントこぼれ話

●腸内細菌は、腸管の壁にベッタリ張り付いているわけではなく、つねに便と一緒に排泄される。腸内細菌が分裂して増えるスピードが、排泄されるスピードより速いと、ある種の腸内細菌が定着しているように見える。同じ腸内細菌がずっと留まるわけではないのだ。

⑦ ズバリ良い腸内環境とは? それを作るには?

腸内環境の最前線

最新の研究でわかってきたのは、良い腸内環境の第一条件はできるだけ多くの種類の腸内細菌が定着する、腸内細菌の「多様性(ダイバーシティ)」が豊かであるということ。その方が、お腹の中での発酵が盛んになり、短鎖脂肪酸のように人体に有益な成分が多く作り出せる。

発酵というとパンや乳製品などを思い浮かべるが、腸内でも発酵は行われている。つねに適度な体温に保たれた腸管内では「体内発酵」が進みやすいのだ。

パンダは笹を好み、コアラはもっぱらユーカリしか食べないが、ヒトはさまざまなものを食べる雑食。そこには、多彩な食物繊維が含まれており、何がどれだけ腸管まで届くかはわからない。腸内細菌は食物繊維を餌としているが、どんな食物繊維でもOKというわけではなく、種類に応じて好き嫌いが激しい

多様な腸内細菌が定着していれば(多様性)、どのような食物繊維が腸管まで届いても、反応できる腸内細菌が棲んでいる可能性が高く、「体内発酵」が活性化しやすく、人体に有益な成分が増える確率が高い。

まずは「食物繊維」の摂取量を意識

かつて日本人は多くの食物繊維を摂取していたが、現在では食物繊維の摂取量は不足気味。特定の食べ物に偏ることなく、穀物野菜海藻類きのこ類などから、バラエティ豊かな食物繊維を摂るように心掛けたい。

多様性という面でも、これさえ摂っておけばOKという万能食品はない、ということがポイントだ。そこに、「体内発酵」を応援してくれるビフィズス菌や乳酸菌といった有用菌を含む発酵食品もプラスしよう。

腸内細菌を中軸とする腸内環境は、これまで見たように、体質脳の働き太りやすさ免疫力運動機能などに広く作用している。お腹に定着している腸内細菌は、「共生」している生涯の友。自らの体調の善し悪しで、彼らが元気に活動できているかをモニタリングしつつ、腸内細菌も意識した食事と生活を送るようにしたい。

トークイベントこぼれ話

●『日本人の食事摂取基準(2020年版)』では、食物繊維の1日の摂取目標量は、65歳未満の成人男性で1日に21g以上、同女性で18g以上。現状ではそれよりも、男女ともに食物繊維が不足している。不足しないように、多様な食品から食物繊維の摂取を増やそう。

●食物繊維や発酵食品を摂っても、すぐに自覚できる変化が現れるわけではない。まずは1〜2週間続けてみて、便通の改善、カラダの軽さ、疲れにくさなどをチェック。ポジティブな反応が得られたら、その食事を継続しつつ、食生活が偏らないように多様な食材も試そう。

トークイベント協賛

沢井製薬

https://www.sawai.co.jp/

取材・文/井上健二 撮影/山城健朗、山本嵩、安田光優 イラストレーション/沼田光太郎

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