今も変わらず若者から熱烈なラブコールを受ける名車《ホンダ シティ カブリオレ》|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

撮影/五十嵐 一晴 文/豊田耕志

初出『Tarzan』No.875・2024年3月7日発売

80年代が産み落とした、シティなオープンカーは、昔も今も若者たちの特権。

「走っていて気持ちがいいのは、国立競技場前の道路。あらゆるスポーツの“殿堂”の前を通過するときは、ロードレーサーだった時代の血が騒いで、爽快な気分になるんです」

清々しい笑顔でそう話すのは、原宿の自転車店〈ONO WHEEL〉の共同店主、小野康太郎さん。ハンサムすぎるブルーの《ホンダ シティ カブリオレ》が、爽やかな彼の人柄にめちゃくちゃ似合っている。

「実はそのポップなブルーボディに惚れて、2年前にゲットした一台なんです。ちょうどその頃、中学から一筋を貫いてきたロードレースの選手を引退したタイミングで。それまではクルマといえば、自転車を積めることが大前提でしたが、気持ちが吹っ切れたこともあり、“これからは乗りたいクルマに乗ろう”と、全世界のクルマというクルマを隅々までディグしたんです」

その結果、辿り着いたのが「脱いで、パラダイス」なる迷キャッチコピーとともに1984年にデビューしたハッチバックの名作、シティのオープンカー。

かの有名なカロッツェリア〈ピニンファリーナ〉(主にフェラーリを手掛ける自動車デザイン会社)によるファッショナブルな意匠もウケて、当時も今も若者たちから熱烈なラブコールを受けるホンダのレジェンダリーカー。

バックライトと“CITY CABRIOLET”ロゴの組み合わせは、まるでデザインの黄金比。何度眺めても完璧。

「このクルマは、自転車を選ぶときと同じように、所有欲を満たしてくれる特別感が最大の魅力。しかも、僕の“シティ”は、所々いじくった形跡が見られ、ボンネットには純正にはないパワーバルジ(出っ張った箇所)が備わっていたり、本来は樹脂パーツのバンパーやモール部分もボディと同系色のブルーで塗装されていたり。凝り性の前オーナーのおかげで、唯一無二の個体に!」

あくまでも純正の装いは崩さず、シティのターボモデル、シティターボ2の要素をセンスよく組み込んだそのカスタムも小野さんのハートを射止めたゆえんとか。

「40年近く前のモデルだからATじゃなくてMT。最初は慣れませんでしたが、徐々にギアをスムーズに繫ぐコツなどもカラダに染み付いてきて、逆にアナログな感覚が新鮮なんです。ちなみにソフトトップ(幌)も、もちろん手動式。蒸し暑い夏の夜や、絶好の晴天の日に幌を全開にして、風を浴びながら都内をドライブするのは気持ちがいいものです。まだ冬だから今日は閉じたままでしたが(笑)」

そんなときこそスピードは控えめに、まったりとしたアクセル捌きでクルージング。レースを降りた乗り物好きは、速さを競うのではなく、クルマを自ら操ることの楽しさに目覚めたのだ。

HONDA CITY CABRIOLET

約40年前のモデルだが、燃費の良さはそんじょそこらの現行車にも負けない。また、当時の国産車には珍しく12色を展開するなど、時代を先取りした一台なのは間違いないだろう。

コンソールに備わった空調設備の下には、小野さんが後付けしたオーディオ機器が。USBやBluetooth接続可能で、小野さんはもっぱら〈Apple Music〉の“ラウンジ”というミックスをBGMに流す。

ソフトトップを外すと、ご覧のように開放的な“パラダイス”が出現。夏に海までクルージングしたら、さぞ気持ちがよさそうだな。

  • 全長3,420×全幅1,625×全高1,470㎜
  • エンジン=1,231cc、直列4気筒SOHC
  • 定員=4名
  • 燃費=16.4㎞/ℓ(10モード)
Owner

小野康太郎(〈ONO WHEEL〉オーナー)
1997年、東京都生まれ。22歳までロードレースの世界に身を置き、現在は、兄と原宿で〈オノホイール〉を運営。90年代前後のロードバイクを街乗り仕様にカスタムする。