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タンパク質と、何が同じで、どう違う?ジェーン・スーと〈味の素(株)〉社員が語るアミノ酸のこと。
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今のトレンドはプロテインよりアミノ酸!?スポーツに役立つアミノ酸サプリの開発を手掛ける競技スペシャリストのためのプロ、加藤弘之さんとアミノ酸の働きを、ひもとこう。
加藤弘之さん
かとう・ひろゆき/味の素(株)スポーツ&ヘルスニュートリション部。元オリエンテーリング日本代表。農学博士。アミノ酸サプリの研究統括。アスリートへの学術的裏付けのある食とアミノ酸による栄養サポートにも携わる。
アミノ酸とトレーニング科学について、味の素(株)の方に話を聞いてみた。答えてくれたのは、味の素(株)がJOC(日本オリンピック委員会)と共同で行う〝食とアミノ酸を通じたコンディショニングサポート活動〟にも従事し、スポーツに役立つアミノ酸サプリの開発を手掛ける競技スペシャリストのためのプロ、加藤弘之さんである。
「トップアスリートの多くが、アミノ酸を活用しています。実は、プロテインを運動後に摂ると、(運動しない日の摂取に比べて)消化吸収が遅れることが分かりました。運動は胃腸への負担も大きいからです。アミノ酸は、タンパク質を分解したものなので、胃に溜まることなく小腸で吸収されます。日本代表などのスポーツの現場でも、運動後に必須アミノ酸を速やかに補給して、筋肉の分解を抑えて修復し、その後の食事でトータルな栄養を補給します」
筋合成を促すアミノ酸として知られるロイシン。高齢者を対象にした実験でも、軽い運動とロイシンを含めた必須アミノ酸の摂取の継続により、筋肉をつくる力が増えたという。
アミノ酸は軽量コンパクト、試合会場や合宿、マラソン大会などにも携帯しやすく、タンパク質に比べて少量のため疲れた胃腸にも優しい。
「ランナーであれば、運動前にBCAAなどのアミノ酸を補給し、血中アミノ酸濃度を高めておくことで、ランニングによる筋肉の分解を抑制することも行われています」
運動前にBCAAという3種類のアミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)を摂取することで、運動後の筋肉痛を軽減させることも知られている。
味の素(株)では多くのトップアスリートが実践する栄養プログラムも提供。1日3回の食事に加え、目的に応じた栄養素を必要なタイミングで摂取できる工夫がなされている。
「提案する食事は、見た目が特別なものではなく、バランスが取れたオーソドックスな内容です。しかし、サポートをしているトップアスリートの場合、1日3回の食事だけでなく、合間の補食を含めて、アミノ酸の量や摂取タイミングまでも計算しています。競技特性や時期によって内容も変わりますし、減量を伴う場合はとてもシビアです。そのため、アスリートとディスカッションしながら、そのアスリートに合った中身にグレードアップさせています」
加藤さんが最近注目しているのは、関節・腱に働くアミノ酸。運動時に強い負担のかかる関節・腱の働きをサポートする、6つのアミノ酸(アラニン、アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸、グリシン、セリン、プロリン)を組み合わせたものだという。
「もうひとつは、高強度の運動時のアスパラギン酸というアミノ酸の働きです。サッカーの試合のようにダッシュを繰り返す間欠性の運動で活用すると、ダッシュが持続しやすくなることが分かりました」
実は、東京2020オリンピック、およびパリ2024オリンピックの日本代表選手団「TEAM JAPAN」の多くが活用していたという。
「アミノ酸のこれからの領域は、アスリートの集中力などの脳機能。多くの神経伝達物質の材料はアミノ酸です。可能性はまだまだあります」
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取材・文・編集/大田原 透 撮影/小川朋央
初出『Tarzan』No.888・2024年9月26日発売