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動的ストレッチを単に筋温を上げるための運動前のストレッチだと思ってないか? いやいやいや、それだけではない。自身も動的ストレッチでカラダが大きく変わったという為末大さんに、6つの筋肉にターゲットを絞ったメニューを特別監修してもらった。為末さんのYoutubeコンテンツ「為末大学」とのコラボ動画で実際の動きを確認しながら一緒に実践しよう!
為末大さん
ためすえ・だい/1978年、広島県生まれ。Deportare Partners代表。元陸上選手。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400mハードルの日本記録保持者(2024年5月現在)。現在はスポーツ事業を行うほか、アスリートとしての学びをまとめた近著『熟達論:人はいつまでも学び、成長できる』を通じて、人間の熟達について探求する。
目次
伸張→収縮という一連の動作の流れ=ストレッチショートニングサイクル(SSC)を利用した動的ストレッチ。力の抜き方のコツが掴めるほか、瞬発力、可動域のアップなど、柔軟に加えて、トレーニング効果が期待できる。実践のポイントは?
まず反動をつけてリズミカルにやることが大切。 予備動作では筋肉を弛緩させ、ギュッ!と筋肉を伸ばす。そして、伸張反射が起きたとき、タイミングを合わせてポン!と自らも瞬間的に筋肉に力を入れる。ギュッ!ポン!ギュッ!ポン!と20回ほど繰り返す。慣れてくると少しの力で、驚くほどカラダが反応するようになる。
ここでは6つの筋肉にターゲットを絞って動的ストレッチを紹介することにした。行うときは、目的の筋肉が弛緩→緊張するのを意識することが重要。では始めよう。
今回紹介している動的ストレッチを、為末さんのYouTubeコンテンツ『為末大学』でも公開。為末さん実演によるギュッ!ポン!を、ぜひ、動画でもチェックしてみよう。
腸腰筋群はカラダの深部にある筋肉。脚を前に出すときに縮み、同時に体幹を安定させる。イスの背をつかみ、片側の脚を後方に反動をつけて振る、これでこの筋肉が伸びる。ギュッ!と伸びたら、伸張反射でポン!と前方へ振り出す。
脚を後方に振ったときは、骨盤をしっかりと固定する。NGのように骨盤も一緒に後ろへ引かれてしまうと、腸腰筋群は伸び切らずに、伸張反射が得られない。うまく蹴り出せなくなる。
手のひらを上に向け、両腕を横に開き、脚を伸ばして仰向けになる。片側の脚はまっすぐにしたまま、逆側の股関節と膝を曲げ内側へ倒す。反対の手で膝をつかんで押し下げ、腰をひねってギュッ!手を放して、反動で腰が戻ってポン!
伸ばした腕側の肩や肩甲骨が床から浮いてはダメ。脊柱起立筋=腰をひねることができない。手のひらを床につけるのではなく、上に向けることで肩の関節がロックされ、浮きにくくなる。
床に膝をつき、イスの座面に手を乗せ、腕立て伏せの姿勢になる。スタートの姿勢から肘を深く折り、胸を開いて、座面の下までギュッ!と押し下げて、次に腕でポン!と押し返して、胸を座面の上まで跳ね上げる。
目的は胸にある筋肉・大胸筋を伸ばして縮めること。だからカラダを深く沈めなくてはダメ。よくあるNGは、頭だけが下がってカラダが動いていないフォーム。まったく効かない。
膝を曲げて前傾し、腕を伸ばして手のひらをイスの背に乗せる。スタートから、左右の肩甲骨を寄せ、上体を押し下げるようにしてギュッ! 次は反動と腕の力を使ってカラダを跳ね上げて、肩甲骨をやや開いてポン!
肘を曲げてしまうと肩甲骨が開いてしまい、寄せにくくなる。肘、手首を伸ばしてロックすることで、肩甲骨の大きな動きを出せる。腕はしっかりと伸ばしておくのが、ここでのキモだ。
床に四つん這いになる。膝を開いて足首を曲げ、足の内側を床につける。背は伸ばす。スタートから尻を斜め下に引き下げ、股関節を床に押し下げるように沈み込んでギュッ! 反動をつけて、股関節を閉じるように尻を上げてポン!
背中が丸まってしまうと、膝は内側に向いてしまい(内転)、股関節を外へと広げづらくなる。胸を張って、背をしっかりと伸ばすことで、膝が外を向き、股関節が使えるのだ。
床に胡坐をかいて座る。片側の膝を立てて、足裏を寝かせた脚の太腿の外側へ置く。背は伸ばす。立てた膝を両手で抱えるようにして、胸に近づけるように引きつけてギュッ! 瞬間に腕の力を抜いて、反動で脚が倒れるようにポン!
胸を張って、背を伸ばしておくことがポイント。背中が丸まってしまうと、骨盤が後ろに傾いてしまい、臀筋を伸ばすことができなくなる。尻にある筋肉が伸びているかを確認しよう。
取材・文/鈴木一朗 撮影/内田紘倫 編集/堀越和幸
初出『Tarzan』No.882・2024年6月20日発売