【棚橋弘至・連載】第8回:基礎にして深い「胸トレ」遍歴。大胸筋はカッコいいじゃないか!
新日本プロレス「100年に一人の逸材」棚橋弘至が綴る、大胸筋のように厚く、起立筋の溝のように深い筋肉コラム。第8回のテーマは「胸トレ遍歴」について。
大胸筋は、第一歩であり奥深い。
大胸筋トレは深いです。大胸筋は筋肉達の代表とも言えるでしょう。そして、大胸筋は筋肉達の中でももっとも有名な存在であり、大胸筋は最初の一歩でもあり、つまり大胸筋は…。
と、大胸筋への思いは尽きませんが、今回のテーマは、みんな大好き「大胸筋」でいきます。第2回の連載でも大胸筋をテーマにしましたが、今回はより詳しく僕の胸トレ遍歴を遡っていきたいと思います。
トレーニングを始めるとき、1番最初に鍛えるのは大胸筋ではないでしょうか? 家トレで腕立て伏せ。ジムへ行って最初にベンチプレス。と、真っ先に鍛えたくなる部位でもあります。
それは、反応を感じ易いからです。筋肉に血流が流れ込み大きくなる感覚をパンプアップと言いますが、大胸筋はパンプを感じやすく、鏡でも目視でも見える位置にあるため、その成長具合を確認することができる部位です。
鍛え方も豊富にあり、腕立て伏せなどの自重トレ。ベンチプレスやインクラインプレスなどのバーベルトレ。ダンベルを使ってもいいし、ケーブルやマシンなどでもトレーニングすることができます。
筋肉を刺激に慣れさせないためにも、色んなトレーニングで鍛えた方が良いのですが、長年やっていると好き嫌い、得意不得意が出てきます。
僕の場合は…全部得意なのですが、2016年に左二頭筋を部分断裂、2018年に右二頭筋、右大胸筋下部を部分断裂してから、ベンチプレスのMAXが伸びなくなったので、トレーニングメニューも少しずつ変えて現在に至っています。
一気に大きくなった時期、停滞していた時期など、トレーニングメニューを照らし合わせることで、何が効果的だったのか?を見ていきたいと思います。
青春の学生時代と、大胸筋トレ。
初めて大胸筋を意識したのは中学生の頃でした。親戚のおじさんからブルワーカーをもらい自宅でひたすら鍛えていましたね。このブルワーカーは7秒間力を入れて止めるというアイソレーション系の器具でしたね。
毎晩、トレーニングしていた記憶があります。ただ、栄養学が抜け落ちていたので、なかなか変化は見られませんでした。
次は高校の野球部の頃でした。MAXを測定して80%くらいの重さで6〜10回挙げるということを意識してやっていました。高校3年生のときのMAXは80kgくらいでしたね。
うっすらと大胸筋の形が浮き上がってきて、体育の水泳の時間では、女子よりも男子にキャーキャー騒がれた思い出があります(笑)。体重は65kgくらいでしたね。
大学生になり、トレーニング方法は飛躍的に増えました。大学のトレーニング施設が充実していたことや、ボディビル雑誌を読み漁ったこと、プロレスラーになりたいと思い始めたことで、よいと言われるトレーニング方法は片っ端からすべてやったかな。
体重も大学卒業時には65kg→90kgと25kg増加。ベンチプレスのMAXも80kg→140kgと、大学のトレーニング室の中ではかなり強い方になっていました。
武藤敬司選手に憧れて、挙げた190kg。
そうして、プロレスラーになり、鍛える事が仕事になると、トレーニング頻度も飛躍的に増える事になりました。が、トレーニング頻度が増えて、力が増したことにより、筋肉痛になる頻度が減っていきました。
「筋肉痛=筋肥大」ということではありませんが、どうせやったんだったら、筋肉痛になりたいわけです(笑)。若い頃は、やはり重さにこだわっていましたね。プロレスラーだから、という変な見栄もあったのかもしれません。
しかしながら、新日本プロレスに入門して付き人になった武藤さんは本当に力が強くて、よく一緒にジムにも行きましたが、ベンチプレスのMAXが190kgだったんですね。それが、いつしか僕の目標になっていました。
2016年だったかな、道場でベンチプレスのMAX190kgに挑戦しました。そして、運命の瞬間…190kgを1回成功させたのでした。それ以来、190kgは挙がっていませんが、その当時は160kgで10回とか挙げていましたね。
新日本のレスラーの中でも相当力が強い方だったと思います。ま、試合でそのパワーを活かした記憶はあまりないですが(笑)。
大胸筋との“騙し合い”の日々。
そうして現在は、ダンベル系種目を中心に大胸筋を鍛えています。
最初の種目にダンベルフライを持ってくることが多いです。次にダンベルプレス。そして、インクラインダンベルプレス。デクラインがある場合はデクラインダンベルプレスもやります。
しかし、ダンベルばっかりやっていると、刺激にも慣れてきてしまうので、たまにベンチプレスをやりますが、150kgをヒーヒー言いながら挙げることになる自分が情けなくなるので、しばらくベンチプレスのMAXにこだわってやったりします。
時々、胸トレ全種目ケーブルだけとかマシンだけとかの日もあります。要は、筋肉との騙し合い的なところもあるのかもしれません。
刺激に慣れさせないことも重要なのですが、やはり今はダンベル種目での胸トレを推したいですね。それはなぜか?筋肉の可動域が広いからです。大胸筋をしっかりストレッチさせて、最大限収縮させるにはやはりダンベルが良いように思います
皆さんの大胸筋は何で作られたか?非常に興味がありますが、体型や筋肉のつき方、三頭筋の強い、弱いなど個人差がありますからね。色々試してみて欲しいと思います。
冒頭でも言ったように大胸筋は筋肉の中でも1番目立つ所にあります。第2回の連載でも言いましたが、言わば「筋肉界のエース」。厚着になってくるこれからの季節に集中的に鍛えまくり、Tシャツの季節に鍛え上げた大胸筋を見せつけましょう。
一冬超えた大胸筋は相当大きくなっているはずです。
棚橋弘至
たなはし・ひろし/1976年生まれ。新日本プロレス所属。立命館大学法学部卒業後、1999年デビュー。低迷期にあった同団体をV字回復に導き、昨今のプロレスブームをリング内外の活動で支える。