「TOX検査」でわかること｜最先端検査ってナンだ!? ③

教えてくれた人

普段の暮らしで毒が溜まっていく。

バイオ検査（詳しくはこちらの記事で解説）の第2弾は「TOX（TOXICITY）」という毒性化合物のスクリーニング検査。はて毒とは何ぞや。サソリ？　フグ？　きのこ？　いやいや、ひと口含んで泡を吹くような毒ではなく、密かにカラダの中に蓄積されていく化学物質のこと。 ちょっと信じられないような話だが、現代人は普通に暮らしているだけで日々「毒＝化学物質」をカラダに取り込んでいるという。たとえアルコールもタバコもやらない健康志向の人間だとしてもだ。 たとえば、難燃剤を含んだカーテンやマットレス、いい香りのする柔軟剤、布に染み付いた匂いを消す消臭剤、新型コロナの蔓延で巷に出回っている次亜塩素酸なども毒性化合物に当たる。つまり家でも外でも危険がいっぱい。 「新生児の臍帯血（へその緒）を調べたレビューでは、200種類以上の毒が含まれていることが報告されています。それによると、一度も食事をしていない新生児から50年前に使用が禁止されているDDTという殺虫剤の成分が検出されています。これは母親からだけでなく母親の母親、おばあちゃんのカラダに蓄積している毒物が孫の世代に受け継がれているということ」（本間龍介さん） なんと、DNAだけでなく毒まで子々孫々受け継がれていくとは。恐ろしや…。でも怖い怖いと怯んでばかりじゃいられない。最先端検査で今の自分にどれだけ毒が溜まっているか分かるものなら、ぜひ知りたい。将来の健康障害を防ぐためにも。

検体は前回の有機酸検査と同様の尿。さまざまな試薬を用いて14種類の毒性化合物をスクリーニングし、パーセンタイル（計測値全体のどの位置に分布するか）を計測したもの。さあ編集ワタベとライターうらん、衝撃の事実を受け止め切れるか？

連載担当2人が検査を受けてみた。

尿検査で明らかになる体内に蓄積された毒性化合物。便利で快適な現代人の生活の背景には、驚くほどの毒素があった。毒を溜めるも溜めないも、生まれ育った環境や普段の生活習慣次第。『ターザン』スタッフ2名、結構しっかり溜め込んでました！

検査を受けた人

うらん　せ、先生！　検査結果の1ページ目をめくったら、私いきなり数値が振り切れてるんですけど〜。えーとこの項目はヒドロキオドロキ…？ 本間　「2-ヒドロキシイソ酪酸」ですね。これはガソリン添加剤です。 うらん　ガソリン!?　いや私、ガソリンスタンドに勤めたことないし、道路っぱたで交通量調査のバイトをしたのはもうウン十年前だし。

ワタベ　ウン十年前って。うらんさん、若ぶってるけど結構歳行っているんですねぇ。 本間　ガソリンそのものというより排気ガスですね。東京や横浜、大阪などの大都市に住んでいる人はこのパーセンタイルの数値が高い人が多いんですよ。 うらん　てやんでぇべらぼうめ！　こちとら生まれも育ちも東京でパーセンタイル95以上でぃ！ ワタベ　ヨチヨチ歩きの頃から排気ガス、吸いまくりってことですね。ふふふ、その点、僕は自然豊かな福島県で育ったから数値が全然低いです。 うらん　むきーっ、ちょっと待ちなさいよ！　その代わりと言っちゃなんだけど、ワタベはこの「リン酸イジメル」がめちゃ振り切れてるじゃない！ ワタベ　違いますよ、うらんさん。「亜リン酸ジエチル」です。えーと、なに？　最も毒性の強い物質グループのひとつ？　ひえぇ！

本間　一般的に農薬に多く含まれている化学物質です。よく大都市は空気が汚くて地方都市は空気が澄んでると言いますけど、実はそんなことはないんです。 うらん　ド田舎でも大気汚染ってあるんですか？ ワタベ　ド田舎じゃないです！　ちょっとだけ田舎です！ 本間　日本の場合、通学路に畑や田んぼがあるでしょう。そこで子どもたちが農薬や殺虫剤を吸いまくるわけです。 ワタベ　僕、学校まで片道3km歩いてました。しかも田んぼだらけの道を…。 本間　アメリカに比べると日本の単位面積当たりの農薬使用量は約10倍。しかも農地と生活エリアは完全に分かれているからアメリカの子どもは農地を歩きません。だから日本の地方都市出身者は農薬の体内の蓄積量が多い傾向があるんです。 ワタベ　ああ〜、通学どころか田んぼのあぜ道でよく遊んでました〜。おらこんな村いやだ〜。 うらん　ってことはあれですか？　野菜や果物も農薬使ってるからしょっちゅう食べてると毒が溜まるんですか？ 本間　ですね。国産野菜は安心というけどリスクはあります。僕は必ず皮を剥いて食べてます。 うらん　いや〜ん、皮ごと食べた方が栄養があるって聞いたのでゴボウもリンゴもバナナも皮つきのまま食べてました〜。でも私、この数値は低いからひとまず安心。 ワタベ　そんなこと言ってうらんさんも亜リン酸ジエチルの数値が振り切れてるじゃないですか。 うらん　あっ、本当だ！　先生これなんでですか！　もしや皮についてる農薬!? 本間　農薬にも含まれてますが、もうひとつ考えられるのは殺虫剤ですね。 うらん　殺虫剤…毎年夏、大嫌いなゴキブリを発見するたび部屋が霞むくらい噴霧してるプロ仕様のあれかしら。 本間　虫が死ぬんですから人間にもいいわけがありません。 ワタベ　電子蚊とりマットとかもヤバいんですかね。 本間　化学物質ですから。虫除けにはユーカリオイルなど自然界にあるものがおすすめです。 ワタベ　先生、僕 「2-ヒドロキシエチルメルカブツール」っていう数値もヤバめなんですけど。 本間　これはプラスチックですね。ペットボトルや食材トレー。 ワタベ　ペットボトルの飲料はよく飲みますけど、ダメすか!? 本間　そうですね。アメリカではガラスのボトルに移し替えて飲んでる人も多いですから。 うらん　つまり便利なものは毒性化合物まみれなんですね。 本間　そう、20世紀から毒が増えてきて21世紀は毒だらけの時代と言えます。毒が溜まっても症状が出ない人もいますが、遺伝的に解毒が下手な人もいます。その場合は毒の蓄積でミトコンドリアの機能が低下して疲れやすくなったり、パーキンソンやアルツハイマーといった脳の神経障害が起こることもあるんです。 ワタベ・うらん　せ、先生、どうしたらいいんでしょう!? 本間　どんなに毒を避けようとしても現代に生きている限り100点は取れません。減らせるものは減らしてあとは毒素を吸着して排出する方法をおすすめしています。具体的にはクロレラ、クレイという粘土、グルタチオンという解毒物質の服用などです。 ワタベ　よし！　明日からは水道水直飲みだ！ うらん　私は今年のゴキ対策をホイホイ系にスイッチします！

今回の「TOX検査」

この連載をもっと読む

Series

最先端検査ってナンだ!?

取材・文／飯田橋うらん　イラストレーション／上田よう　取材協力／本間龍介（スクエアクリニック副院長）

初出『Tarzan』No.812・2021年6月10日発売

Share