糖化&AGEを避ける! カラダを老けさせない4つの食事術
取材・文/石飛カノ 撮影/小川朋央 料理製作・スタイリング/美才治真澄 取材協力/山岸昌一(昭和大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門教授)
初出『Tarzan』No.804・2021年2月10日発売
体内の糖質がタンパク質に結びつくと、複雑な反応を経てさまざまな化合物に変異していく。その一部は分解され無毒な物質となって体外に排出されるが、約10%は後戻りのきかない老化や病気の原因物質となる。これが終末糖化産物(AGE)と呼ばれるもの。
こちらの記事(老化だけじゃない。深刻な病態も引き起こす「AGE」の正体)ではAGEが作られるメカニズムや、カラダに与える悪影響などを解説した。本記事では、どうすれば体内のAGE量を少なくしたり糖化のスピードを緩められるのか、4つの食事術として紹介する。
① 外食に含まれるAGE量もチェック。
血糖値が高い状態が続くことでAGEが作られる。だから血糖値コントロールがとっても重要。確かにそう。でももうひとつ、忘れちゃならないのが食事からAGEを摂るリスクを下げること。
食事に含まれるAGEのうち約7%が体内に吸収されることが分かっている。体内での産生を防ぐとともに外から摂り入れる量を減らす。この両輪で対策することがAGEによる老化や病気の予防につながる。
さて、下の表は一般的な外食メニューに含まれるAGE値。
ほぼ半数の人が1日1万5000という数値を超えている。まずは1万5000以下に抑えること。最終的には8000〜1万程度に留めたい。となると糖質オフ中でも、ステーキをいくら食べてもOKというわけにはいかない。その一皿で2万超えだ。
② 高温加熱メニューの頻度を落とす。
外食選びの最大のコツは調理法に注目すること。前述の表をご覧の通り、同じ餃子でも水餃子に比べて焼き餃子には約2.5倍のAGEが含まれている。下の表でも調理法によるAGE値の違いが分かるはず。
そもそもの糖化反応、メイラード反応を思い出してほしい(参考記事:老化だけじゃない。深刻な病態も引き起こす「AGE」の正体)。カリカリトースト、ジュージューステーキ、どちらも高温加熱した料理である。つまり、長時間の高温調理で焦げ目がつくようなメニューにはAGEがてんこ盛りということ。
さらに、糖とタンパク質をくっつける接着剤のような役割を果たすのは油脂。よって、バターやオリーブオイルでソテーした料理や揚げ物などはどんどん糖化を進めてしまうのだ。これに対して水分は逆に、糖とタンパク質の間に入り込んでAGEの産生を防いでくれる。
これらのことを踏まえると、AGEの量を増やさない第一選択肢は生。次に油を使わない最少時間の加熱料理、蒸し料理や短時間の煮物料理。ちとヤバいのが炒める、またはグリル料理。できれば避けたいのは揚げ物だ。鶏の唐揚げを一生食べるなとは言わない。揚げ物は週1に留めるなど頻度調整がマストという話。
③ 狙い目は肉より魚。
たとえば牛肉ならこんがり焼き目のついたウェルダンより血の滴るようなレアステーキの方が、余計なAGEをカラダに取り込まずに済む。鶏肉なら香ばしい焼き鳥よりも水炊きの方に軍配が上がる。
でも、血糖値がちょい高めでもう一歩進んで糖化のリスクを下げたいというのなら、肉ではなく魚を積極的に口にしてほしい。魚の脂に含まれる不飽和脂肪酸は血中の中性脂肪を減らしたり、心筋梗塞を抑制することが知られていて、さらに抗酸化作用も期待できるからだ。
糖化が進むとAGEが受容体のRAGEとくっつき酸化と糖化のダブルパンチで健康が害される。そのリスクを減らしてくれるのが魚。実際、数ある食品の中でも魚は「健康にいい」ということが複数の信頼できる研究で報告されているテッパン食材なのだ。
ただし、抗酸化作用が強いということは自らが酸化されやすいということ。食べるなら新鮮なお刺し身で。
④ 糖化を防ぐ機能性食材を賢く取り入れる。
調理法を選んでAGEをカラダに溜めないというのは守りの基本的な態勢だ。それと同時に体内での糖化反応を抑制したり受容体のRAGEの量を減らしたりする食材を取り入れる。こうした攻めの態勢を整えれば鬼に金棒。
たとえば発芽3日目のブロッコリーの新芽、ブロッコリースプラウトにはRAGEの量を減らしたり、AGEがRAGEのカギ穴にはまりにくくする役割が期待できる。これはスルフォラファンという機能成分の働きだ。
マイタケに含まれるキチン、キトサンはAGEを吸着し、β-グルカンは血糖値上昇の予防にひと役買ってくれる。オクラに豊富なネバネバ食物繊維もまた然り。レモンは抗酸化ビタミンの代表格ビタミンCの宝庫。これらの機能性食材を利用してAGEを溜め込まない食生活を。