【タイプ別・解説】生活習慣病リスクを高める「脂肪肝」。溜めやすいのは、どんな人?
肝臓はもちろん内臓。そこに脂肪が蓄積されて脂肪肝となった…のに内臓脂肪じゃない!? 肝硬変や肝がんにも進行する場合があるという恐ろしい脂肪肝について、きちんと知っておこう。
取材・文/石飛カノ 編集/阿部優子 イラストレーション/沼田光太郎 取材協力/南勲(横浜市立みなと赤十字病院糖尿病内科部長)
初出『Tarzan』No.825・2022年1月4日発売

目次
「脂肪肝」の原因はさまざま
カンゾー先生
教えてくれた人
肝臓研究ひと筋の開業医。東に脂肪肝の人あれば行って看病してやり、西に脂肪肝予備群の人あれば行って生活指導を行う。
※当記事は専門家の監修を受けた内容ですが、カンゾー先生は実在しません。
脂肪肝のみなさん、こんにちは。私の名はカンゾーです。まさかとは思いますが、みなさん脂肪肝を内臓脂肪と勘違いしてませんか?
内臓脂肪は即効力のあるエネルギーとして腸間膜という場所に適度に蓄えられているもの。一方、肝臓は脂肪を作る臓器ではありますが、溜める臓器ではありません。
本来つくはずのない場所に溜まった脂肪は「異所性脂肪」といって、過剰な内臓脂肪同様に生活習慣病のリスクを高めると考えられています。「テヘへ、脂肪肝って言われちゃった」では済まないのです。
ひと口に脂肪肝といっても、その原因はさまざまなので厄介です。みなさんの肝臓にどうして脂肪が溜まってしまったのか? お一人ずつ説明していきましょう。
タイプ① 内臓脂肪が蓄積しすぎな人

フトシさん/学生時代はラガーマン。社会人になってからは運動から遠ざかり、ごはん大好き揚げ物大好きの食生活のみ継続中。
なぜ内臓脂肪の蓄積が脂肪肝につながる?
脂肪肝の原因となるキーワードはインスリン抵抗性。インスリン抵抗性が高まる=血液中の糖を各組織に運ぶインスリンの効きが悪くなるということ。
内臓脂肪が蓄積されるとアディポサイトカインという悪玉物質が分泌され、インスリン抵抗性が高まる。行き場を失った糖はまず皮下脂肪として溜め込まれ、そこがいっぱいになったら次に内臓脂肪として蓄積され、いよいよ最後は肝臓や筋肉に異所性脂肪として蓄えられるという説がある。
タイプ② 食べても太りにくいインドア派な人

ホソミさん/根っからの文科系。休みの日にすることといえば寝転がってのマンガ観賞→メシ→ゲーム対戦→メシ→マンガ観賞の無限循環。
内容脂肪が少なくても脂肪肝になるケースも
インスリンが主に作用する組織は脂肪と肝臓と筋肉。
順天堂大学の研究グループが正常体型の人々を調べたところ、内臓脂肪がなくても脂肪肝があると脂肪と筋肉のインスリン抵抗性が高く、逆に内臓脂肪があっても脂肪肝がなければインスリン抵抗性が低いことが分かったという。
つまり、非肥満者では内臓脂肪より脂肪肝の方がインスリン感受性との関連が深い。脂肪肝の原因のひとつは筋肉の糖の取り込みが悪いこと。かくれ肥満には運動が不可欠。
タイプ③ 酒好きで毎日のように飲んでる人

ジョウゴさん/毎日飲まない日はないというお酒大好きライフを過ごすこと二十数年。近頃ちょっとだけ疲れやすさを感じるように。
アルコールを摂取すると脂肪肝になりやすい?
アルコール性脂肪肝の原因は、アセトアルデヒドによって肝臓の機能が低下することだけではない。アルコールを分解するときにビタミンなどの微量栄養素が消費されてしまうので、必要な組織に回せなくなり全身の代謝が低下する。
また、アルコールを摂取すると筋肉の合成が阻害されるので、体内の糖を消費する場が奪われる。結果的に糖がだぶついて余った分が肝臓に回されるという説もある。日本酒なら1合、チューハイなら350mL缶1本が適量だ。
タイプ④ 果物大好き自称ヘルシーな人

ヘルシーさん/美容と健康に関心の強いおしゃれ女子。「カラダにいい」というフレーズに敏感で、家には健康食品が売るほどある。
果糖ブドウ糖液糖にも注意
フレッシュな果物の食べ過ぎも脂肪肝の原因のひとつと考えられるが、問題なのは果物よりもむしろ果糖ブドウ糖液糖。これはトウモロコシやジャガイモのでんぷんを原料とした人工甘味料で、ブドウ糖より果糖が多め。脂肪合成に傾きやすい果糖を無意識に口にしてしまうことになる。
加工食品のラベルはしっかりチェックのこと。ちなみに果糖が作り出す終末糖化産物・AGEsは肝臓の炎症や線維化を促すという説もある。
タイプ⑤ 無理なダイエットで栄養失調な人

スキニーさん/数年前に一念発起してダイエットを始め、鉄の意志で食事をコントロール。今では太ることを極端に恐れるように。
栄養失調だと肝臓から脂肪を放出しにくい
肝臓の重要な役割のひとつはコレステロールや中性脂肪を合成すること。これらの脂は肝臓から血液経由で各組織に送られて細胞膜やホルモンの材料となる。コレステロールや中性脂肪単体では血液に馴染まないのでアポタンパクというタンパク質と結合し、リポタンパクという形で血液中に運ばれていく。
しかし栄養失調の人はこのアポタンパクを合成できず、肝臓から脂肪を放出しにくくなる。飢餓状態で脂肪肝というレアケースもあるのだ。
もの言わぬ肝臓をいたわろう!
肝臓はどんな臓器よりも再生能力が高く、機能が低下してもなかなか悲鳴を上げない沈黙の臓器です。その忍耐力に甘えて脂肪肝を放っておくと、炎症を起こしたり、硬く線維化して肝機能障害に陥るリスクが高くなります。
「たかが脂肪肝」と甘く見ずにきちんと対処してください。カンゾー先生はいつもみなさんを見てますよ。