喫煙、飲酒も危険! 歯周病を防ぐための歯磨き改善講座
毎日歯磨きをしていると安心するのは大きな間違い。30代で歯周病が進んでいる人はとても多い。歯磨きを改善するためのキホンと、8つの歯磨きのやり方。
(初出『Tarzan』No.743・2018年6月14日発売)
皆、他人事じゃない歯周病。その傾向と対策
歯磨き粉のCMでよく「歯周病対策に!」って言われるけど、結局年をとってからの話でしょ? それに俺、毎日ちゃんと歯磨きしているもんね。
そんな呑気に構えている人こそ、いつの間にか歯周病に罹ってしまうかもしれない。そう警鐘を鳴らすのは日本歯科大学生命歯学部で准教授を務める関野愉先生だ。
「歯周病はプラーク、つまり歯垢が歯と歯茎の境目の溝の部分に溜まり、歯垢に含まれる細菌が停滞して歯肉が炎症を起こして赤くなったり腫れたりする疾患です。進行すると歯周ポケットが次第に深くなり、歯を支える土台が溶けて歯がぐらつき始め、最終的には抜歯の必要が出てくるのです」
怖いのは、これらの症状は進行中に虫歯のような痛みをほとんど感じないこと。ゆえに歯周病は「サイレントキラー」とも呼ばれるわけだが、気付いたときにはもう手遅れ、なんてことにもなりかねない。そして下のグラフの通り、30代でもすでに歯周病が進んで、歯周ポケットが深くなってしまっている人は非常に多い。
「歯周病は遺伝など避けにくい要因もあって、さらに糖尿病患者の場合に歯周病が悪化しやすかったり、逆に歯周病により糖尿病が悪化するケースも。他にも歯周病が一因となって罹る病気が存在します。ただし生活習慣の改善で進行を防ぐことも可能です」
代表的なのは大量喫煙と大量飲酒をやめること。とくに喫煙は歯周病の進行を早め、治療への反応を鈍らせることがわかっている。また、大量飲酒は口内に糖を多く残したり、唾液の分泌を抑えるため口内環境を悪化させる危険性がある。そのうえで、毎日しっかり歯磨きしよう。歯周病の予防は、一にも二にも歯磨きからだ。
すべては歯周病を防ぐため。歯磨き改善講座
毎日、歯をどうやって磨いていますか?と聞かれても即答できないくらい、普段の歯磨きは無意識に行っている。
しかしその何も考えない磨き方が、いつの間にか口内環境を悪くして歯周病の温床を作っている可能性だってあるのだ。
歯磨きにも基本ルールが存在する。まず守りたいのは、1日2〜3回、定期的に磨くこと。虫歯の原因となる歯垢と食後の口内に残る糖をしっかり除去するためで、放っておくと糖が分解されて酸が発生し、歯の腐食の原因になってしまう。
しっかり磨けるからと硬めのブラシを選ぶのは避けるべき。歯磨き粉の中には研磨剤が入っているタイプもあるので、歯の表面のエナメル質を傷つけてしまう恐れがある。ふつう~やわらかめを選ぼう。それと同じ理由で、力を入れて磨くのもご法度。軽く小刻みに磨くよう心がけたい。
そのうえで、本当に自分に合った磨き方を見つけるといいだろう。左の通り、磨き方のメソッドはこんなにある。子どもの頃に身につけた方法は、本当に正しい磨き方なのか? これを見てやり方を変えるもよし、歯医者に行ったときに医師に相談するのもよし。
歯磨きのやり方はこんなにある
教えてくれた人:
関野 愉さん(せきの・さとし)/日本歯科大学生命歯学部准教授。歯周病専門医、指導医として多くの臨床経験と知識を持つ。著書に『歯科衛生士のための臨床歯周病学のエビデンス活用BOOK』(クインテッセンス出版)など。