頑張り過ぎてない? オーバートレーニング症候群のチェックリスト
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第23回は、オーバートレーニング症候群について。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.830・2022年3月24日発売
そのパフォーマンス低下はオーバートレーニング症候群?
なんとなくカラダが重く、運動の疲れが抜けない状態がしばらく続くような場合、「オーバートレーニング症候群」が疑われる。
オーバートレーニング症候群とは“過剰なトレーニングの繰り返しでパフォーマンスが低下し、容易に回復しなくなった慢性疲労状態”のこと。ただし必ずしも運動のやりすぎだけが原因というわけではなく、過剰な精神的ストレスでも似たような症状を引き起こすことがあることを覚えておこう。
本来ヒトには、負荷をかけたトレーニングの後にしっかりと休息をとることで、体力レベルがトレーニング前よりも高い状態になる「超回復」という現象が起こるが、回復を待たずして高強度のトレーニングを続けてしまうとオーバートレーニング症候群が発症する。
オーバートレーニング症候群を防ぐチェックリスト
生理学的に正常な状態に回復するまでは段階があり、2、3日程度の休養で回復する状態を「ファンクショナル(機能的)・オーバーリーチング」、数日から数週間要する状態を「ノンファンクショナル(非機能的)・オーバーリーチング」、そして数週間から数か月、場合によっては数年かかる状態を「オーバートレーニング症候群」と呼ぶ。
オーバートレーニング症候群を防ぐには、早期に疲労やストレスに気付き対処することが重要となる。早い段階で異変に気付くためには、下記のようなチェックリストを用いるとよい。
【チェックリスト】
- 安静時心拍数の上昇
- 安静時血圧の上昇
- 不眠や落ち着きのなさ
- 疲労感
- いらだち
- 運動に対するやる気の低下
- 免疫不全
- 向上や改善が見られない
- 極端な体重減少
- 頻発する筋けいれん
- 運動後の過度の痛み
- 月経不全または無月経
このような兆候がある場合はオーバーリーチングまたはオーバートレーニング症候群が推測されるため、医師の診断を受けて休養に努めること。
初期症状は疲労や気だるさだけだったのが、悪化するとその他のスポーツ障害や怪我の誘発、睡眠障害、摂食障害、さらに腎臓病や心疾患といった危険な疾患に発展するケースもあるため決して侮ってはならない。
オーバートレーニングの治療と予防
オーバートレーニング症候群は個人差があるため、その人の状態に応じた個別の対策が必要だ。ただし共通して行わなければならない対策が「完全休養」と「ストレス要因の除去」。これは鉄則である。
オーバーリーチングのような軽症の場合は数日〜数週間の休養とトレーニング量の調整で改善することもあるが、重症化して抑うつ症状や睡眠障害などが見られる場合は、メンタルクリニック等で必要に応じて薬物療法を検討するケースもある。
頻繁にトレーニングをしていた人がトレーニングを中断するとそれまでの効果が著しく低下することがある(これをディトレーニングという)。その焦りから回復前に高強度のトレーニングを再開してしまうアスリートも多いが、それは悪循環。
今の自分のコンディションに応じて、練習内容のコントロール、適切な栄養と水分補給、十分な睡眠時間の確保などを行いながら、回復に努めることが最優先である。
復習テスト
答え:機能的・オーバーリーチング