• 甲高・幅広、外反母趾…。日本人の「足」に関する4つの勘違い
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2020.04.11

甲高・幅広、外反母趾…。日本人の「足」に関する4つの勘違い

日本人と足

健康維持には速歩がいい。だが、慌てて実践する前に改めて目を向けたいものがある。それは足そのものと、歩くという運動の特性。どちらも知らないと正しく速歩できないからだ。

今回、取材に向かったのはアシックススポーツ工学研究所。アシックスでは、2002年に3次元足形計測機を店頭に配備。約100万人の足形データを持つ。現在は国内に200台、欧米諸国に100台ほどが置かれており、日本人と欧米人の足の違いも比較できるようになった。加えて17年には3Dセンサーによる歩行姿勢測定システムを共同開発し、数千人のデータを収集している。

同社が蓄積した豊富なデータを踏まえ、足と歩行の新常識をひもとこう。

勘違い①日本人は甲高・幅広だ。

日本人は「甲高・幅広」だといわれて久しいが、それは明らかに間違っている。

「幅広なのは事実ですが、甲高ではない人が大半です」(アシックススポーツ工学研究所の楠見浩行さん)

日本人は甲高・幅広だという勘違い
内側縦アーチは本来、中足部にある舟状骨が、どれだけ地面から離れているかで評価する。それを反映していると考えられるのが、踵から足長の55%の位置で測る足高、つまり足の厚みである。

幅広かどうかは、「足囲」で判断する。足囲とは、足の指の付け根にあるMP関節の周囲径。MP関節とは、爪先立ちのときに折れ曲がる部分だ。同じ足長(踵から爪先までの長さ。レングス)に換算すると日本人の足囲は欧米人より3〜4mmほど太い。日本人の方が幅広なのである。

甲高かどうかは「足高」で判断する。これは土踏まずのアーチ(内側縦アーチ)の高さを反映し、踵から足長の55%の位置で地面から甲までの高さを測る。同じ足長に換算すると、日本人は欧米人より2〜3mmほど低い。甲高どころか甲低だ。

甲低な理由は、日本人の方が内側縦アーチが潰れて下がっているから。アーチを支える足の筋力が足りないのが一因である。

こうした現状に反して、なぜ甲高だと長年思い込んできたのか?

幅広な分、欧米人仕様の靴を履くと窮屈に感じて甲が当たるから、そう感じてきたのでしょう

勘違い②日本人の方が踵は内側に倒れている。

後ろから見ると、踵は地面と垂直ではなく、わずかに内側に倒れている。そしてランの着地時には踵がより内側に倒れるプロネーションが起こる。プロネーションは着地衝撃の吸収に役立つが、踵が内側に倒れすぎるオーバープロネーションだと着地が不安定になり、膝などの負担も増えて障害の一因となる。

一般的に日本人にはオーバープロネーションが多いとされるが、踵の傾き自体は欧米人より浅い。日本人の内側への傾きは2〜3度なのに、欧米人は4度ほど傾いているのだ。

日本人の方が踵は内側に倒れているは勘違い
足には3つのアーチがある。踵と親指の付け根の拇趾球を結ぶのが内側縦アーチ。いわゆる土踏まずだ。踵と小指の付け根の小趾球を結ぶのが外側縦アーチ、拇趾球と小趾球を結ぶのが横アーチだ。

踵が内側に倒れるほど、足の内側に体重がかかりやすく、親指が外側に曲がる外反拇趾に陥りやすい。踵の傾きからは欧米人の方が外反拇趾になりやすそうだが、実際は日本人の方が外反拇趾になりやすい。その理由も内側縦アーチにある。

このアーチは足にある3つのアーチでもっとも剛性が高い。ことに欧米人のアーチは高くて強靱。踵が内側に倒れ気味でも、強いアーチの支えでオーバープロネーションも外反拇趾も避けられる。

日本人は踵の倒れ具合は浅いのにアーチが低く弱く潰れやすいため、オーバープロネーションにも外反拇趾にもなりやすいのだ。

勘違い③足は一生モノで変わらない。

髪質や肌質が歳とともに変わるように、筋力の低下などによって足も加齢で変化してくる。

アシックスの研究ではその変化は50代から顕著になり、足のトラブルにつながるケースが増えてくる。

足は一生モノで変わらないは、勘違い
50代を過ぎると、足が外側に広がるタイプが増えてくる。外側に体重がかかるようになり、O脚がひどくなったり、将来変形性膝関節症になったりする危険性が高くなる。

外反拇趾は、男女ともに50代からその曲がり方が大きくなる。足の筋肉が衰えて内側縦アーチがより一層潰れやすくなり、足の内側に加わる力が大きくなるのが原因である。

踵の内側への傾きは50代から浅くなる。足の外側に力がかかりやすくなるため、小指が内側へ曲がる内反小趾が起こってくる。

そして横から見ると、加齢で踵は前方へ傾いてくる。前足部に力が加わりやすく、横アーチが潰れて外反拇趾にも内反小趾にも陥りやすい。

横アーチが潰れると足は横に広がる。これを「開帳足」と呼ぶ。

開帳足には内側に広がるタイプと外側に広がるタイプがある。

足が内側に広がると内側に力が加わって外反拇趾になりやすく、外側に広がると外側に力が加わってO脚や内反小趾になりやすい。割合的には後者が多く、膝の内側の軟骨がすり減り、痛みが生じる変形性膝関節症のリスクが高くなるから要注意。

勘違い④歩き方に加齢は関係ない。

足形だけではない。歩き方も加齢で変わり、やはり50代からその変化は目立ってくる。

特に変化が著しいのは歩行速度の低下。それと関連して1歩ごとの歩幅(ストライド)も狭くなる。ストライドが狭いのは、筋力不足で膝が伸びにくいからだろう。

歩き方に加齢は関係ないは、勘違い
グラフの縦軸に歩行速度、横軸に年齢を取ると、筋力低下などで男女ともに50歳を境に歩くスピードが右肩下がりを描いて遅くなってくる。

加えて腰が曲がり、両足の幅である「歩隔」も広がる。歩隔がワイドになるのは、加齢で筋力が落ちるとバランス修正能力も下がるため、支持面を広げてカバーする戦略だろう。

要するに膝と腰を曲げて狭いストライドでペタペタ歩くようになり、いかにも老人っぽい歩き方になる。歩き方も老けるのである。

歩き方に加齢は関係ないは、勘違い
筋力が高くてバランス修正能力にも優れている若者は歩隔が狭く、ほぼ1本ライン上をまっすぐ歩ける。筋力が低くバランス修正能力にも乏しくなる高齢者は歩隔が広がり、爪先を外に向けて重心を保つ支持基底面を広げて歩く。

意外にも歩くときの体幹の横揺れは若い頃の方が大きく、加齢で徐々に小さくなってくる。これは若いほどストライドが広くて歩くスピードが速く、動きもダイナミックだから。手足を大きく振って歩くから、それだけ体幹もブレやすいのだ。

若い人はそのブレを修正するだけの筋力があるから問題ない。歳を取ると、若者のような筋力の維持が難しくなる。それに伴いダイナミックな歩き方をできなくなり、体幹の横揺れは小さくなる。

取材・文/井上健二 イラストレーション/森拓馬 取材協力/市川将・楠見浩行(共にアシックススポーツ工学研究所)

初出『Tarzan』No.784・2020年3月26日発売

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