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太りにくいカラダを作る入浴の仕方

入浴中は汗がじんわりにじむ。運動の発汗とは別ものだが、湯に浸かってカラダを芯から温めることはトレーニーにとって実に有意義。「入浴は痩せやすいカラダ作りにうってつけです」というのは、温泉療法専門医の早坂信哉先生。太りにくいカラダを作る入浴の仕方って?

しっかり湯船に浸かることで、シャワーとはまた違う疲労回復が得られるのは温熱作用によるもの。血流改善により体内の疲労物質や老廃物が排出され、代謝が活発になるほか筋肉痛などを緩和。さらに温冷交代浴などの実践や入浴剤の活用で、自宅の風呂でも申し分ないリラックス効果を得られるはず。

また入浴では直接的なダイエット効果は得にくいが、入るタイミングなどを工夫すれば、入浴でも太りにくいカラダにアプローチできる。入浴の基本は約40度の湯で10〜15分、肩まで浸かる全身浴だ。

「無理して長湯する必要はありません。体調が悪くなると本末転倒です。気持ちいいと感じるくらいで入浴効果はちゃんと得られます」(温泉療法専門医の早坂信哉先生)

食事30分〜1時間前の入浴で「食べ過ぎ防止」

入浴だけで痩せることは難しいが、太りにくいカラダを目指すうえで、2つの入浴法を覚えておきたい。キーとなるのは入浴するタイミングだ。

減量中、血糖値の急上昇はなるべく避けたいもの。そこで、入浴の血糖値を下げる働きを踏まえ、最も血糖値が上がるとされる食後30分〜1時間に合わせて入浴を。下のグラフのように、食後に入浴すれば血糖値の下降が進むという研究もあるので、食後の高血糖対策に有効なのだ。満腹状態のときは内臓への負担の少ない半身浴に。

また食事の30分〜1時間前に入浴すれば、胃腸の働きがスローになり空腹感を感じにくくなり、食べ過ぎ防止になる。水分補給や休息を十分に取って、太りにくい入浴法を心がけよう。

ブドウ糖が入った水の飲用後に入浴した場合の血糖値の推移
ブドウ糖が入った水の飲用後に入浴した場合の血糖値の推移を調べた研究では、入浴すると血糖値が大幅に低下することが明らかに。
出典/国立花巻温泉病院(一部改変)

炭酸入浴剤はトレーニーの味方

今は用途ごとにさまざまな入浴剤がドラッグストアで手に入るが、ダイエット効果のある入浴剤はどれか?

「血行促進効果がある炭酸入浴剤はカラダを早く温めるうえ、入浴後も持続するので最適です」

メントール入りや香り付き、無添加無着色などバリエーションも豊富なので、その日の気分で使い分けを。運動後1時間以内の入浴はNGだが、皮膚表面の血行を促す働きがある炭酸入浴剤の場合、ぬる湯でもポカポカと温かな浴感を楽しめるので例外的に入浴可。

シャワーで汗を流すだけでなく湯に浸かりたいトレーニーは、炭酸バブルに癒やされたい。

ミストサウナにお風呂ビクス…

サウナに入ると、疲労感が軽くなりスッキリする…なんて経験がきっとあるはず。それは発汗作用以上に、入浴と同様に温熱効果によって血流が増えることが大きな理由だ。

「ただし運動後の疲労回復が目的なら、80〜100度のドライサウナはカラダに過度な負荷がかかりかねません」。そこでおすすめは60度程度の低温サウナか40〜50度のミストサウナ。いずれも全身に汗をびっしょりかくまで入る必要はなく、肌にじんわり汗がにじむ程度で十分だ。サウナを出たら25〜30度のシャワーを30秒ほど手足中心にかければクールダウン完了。低温の水風呂は疲労回復を妨げかねない。保温効果を得ることが入浴の最たる目的なので、シャワーが最適。

浴槽は狭いけど入浴中もカラダに有意義なことをしたい! そんな頑張り屋のトレーニーは、水泳プログラムで定番の水中エクササイズの家風呂バージョン「お風呂ビクス」に励んでみては。

アクアビクスの環境に近づけるべく30度くらいの湯を溜めた浴槽で、脚の曲げ伸ばし運動やストレッチなどの軽い運動を。そもそも入浴の消費カロリーはわずかで、42度の湯で10〜15分間全身浴をした場合でも10〜20キロカロリー程度。

だが30度のぬるめの湯に浸かってお風呂ビクスを行えば、体温を奪われた分だけ体温を上げるべく内臓が働き、カロリーの消費量も増える。知ってのとおり、冷えは筋肉によくない。お風呂ビクス終了後は追い焚きをした湯でじっくりカラダを温めよう。

水風呂が苦手な人のための温冷交代浴

多くのアスリートが疲労回復のために習慣的に行うという温冷交代浴は、サウナと同様に「ポンピング」が目的。湯と冷水に交互に浸かることで血管の収縮と弛緩(ポンピング)が起こり、運動でダメージを受けた筋肉の修復が促される。

ただし欧米発の入浴法とあって日本人の体質には合わない部分も。「欧米人と日本人では体感温度が違うといわれます。欧米人と比べて冷点が多く寒さを感じやすい日本人にとって、20度以下の水風呂に浸かるのはハードです」(早坂先生)。

冷たい水風呂に無理に浸からずとも、25〜30度のシャワーを当てればクールダウンになる。体調を見つつ湯船とシャワーの交代浴を2〜3セット行えば、〆に湯に浸かって保温すれば完璧。

運動直後のひとっ風呂で運動中の頑張りがムダに?

運動が終わったら温かい浴槽へザブ〜ン! 疲労にキク気はするが、実は逆効果だ。運動後の血流アップは各部位で必要な酸素などの運搬と疲労物質の排出を同時に行うため、筋肉合成はもちろん疲労回復にも必要な働き。

だが運動直後の入浴で体表への血流が増えすぎれば、かえって筋肉への血流が減ることも。運動後1時間経つまで入浴はおあずけ。汗を流すためのシャワーなら許容範囲。

教えてくれた人

早坂信哉
早坂信哉さん(はやさか・しんや)/1968年生まれ。入浴に関する医学的研究を行う第一人者。温泉療法専門医として東京都市大学の教授を務め、日本健康開発財団温泉医科学研究所の所長も兼任する。『入浴検定 公式テキスト お風呂の「正しい入り方」』(日本入浴協会)も執筆。

取材・文/門上奈央 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/村田真弓 イラストレーション/山崎真理子 監修/早坂信哉(温泉療法専門医)

(初出『Tarzan』No.727・2018年9月13日)

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