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首、肩甲骨、骨盤にやさしい“寝る姿勢”の改善メソッド

自宅ならまだまし。終電でこれをやったら、目も当てられない惨状となる。

日中の活動で生じたカラダの歪みや凝りを睡眠で解消するには、せっせと寝返りを打つに限る! 寝具の選び方をはじめ、寝返りしやすいカラダになるために習慣化したい、寝る前のストレッチも紹介します。

死んだように眠った後は死にそうな状態になる!?

今夜も飲んだ、飲んだ~。酔っぱらってるから風呂はサボって、このまま寝ちゃおっと。

翌朝、嫌な予感で目覚めると、あちこち痛い、痺れている。

「お酒や睡眠導入剤を飲んだ人は、寝返りも打たずに熟睡してしまうことがあります」と語るのは遠藤健司医師(東京医科大学)だ。

普段であれば、ずっと同じ姿勢でいることに不快を感じ、姿勢を変えるもの。ところが、酒や睡眠導入剤で感覚が麻痺すると、それを感じにくくなって、つい同じ寝姿勢を続けてしまうことがある。

「下になっていた部位には水分が集まってきて、血行は悪化し、むくみます。ひどいときは下になっていた腕や脚を動かせなくなって来院する患者さんもいます」

同様のことが肩で起これば肩こりの、腰で起これば腰痛の一因になるという。痛む関節は可動域が小さくなり、硬く動きにくいカラダができあがる。そうなれば寝返りはさらに困難になる。

なぜなら、人は肩関節と股関節を使って寝返りを打つからだ。

「寝返りが減ると、関節の劣化を招き、悪循環に陥ります」

痛いから動かさない。動かないから骨格の乱れを助長する…。動いてこその動物が、不動化すると何かと都合が悪いのだ。

日中の姿勢が夜間の寝姿勢に大きく影響する

あなたはどんな姿勢で寝ているか? 仰向け、横向き、うつ伏せなど寝姿勢は人さまざま。

「寝返りが打てれば結構です。寝姿勢によい、悪いはないんです」

ただし、呼吸器に問題のある人がうつ伏せで眠るのはよくないし、お尻が出っ張った人は仰向けになると腰が反ってしまい、腰痛の一因になるという。太っている人が仰向けで寝ると、舌がそれ自体の重みで喉に落ち込み、睡眠時無呼吸症候群の呼び水になる。

「太っていない人に限って言えば、日常の姿勢、立ち姿と寝姿勢は驚くほど似ています。カラダに歪みのある人は、寝ているときも姿勢がよくないですね」

立ち姿勢と寝姿勢はよく似ていたことを示すグラフ
測定すると立ち姿勢と寝姿勢はよく似ていた
腰椎骨盤の角度を測定すると、立ち姿と寝姿勢(仰臥位)は非常に近いことが分かる。座位の角度だけが異なる。
遠藤健司、鈴木秀和、木村大ほか『立位・座位・仰臥位における腰椎骨盤矢状面アライメント』より

カラダの柔軟性が乏しくなる年配者が猫背だと、寝姿勢も猫背になりがち。一方、ひと晩眠ればすっきりの若い世代なら、就寝中に猫背になったとしても、柔軟性があるため、よい姿勢を取り戻せる。

とはいえ、近年はパソコン、スマホの増加により、猫背がちで過ごす時間が長くなった。前傾している間、広背筋や僧帽筋はずっと伸ばされ続けで、筋緊張が肩こりの一因になる。昼間おかしな姿勢で過ごすと、それが寝姿勢にも影響しかねないからご用心を!

体型に合わせ、寝返りを打ちやすい寝具を選ぼう

体型に合わせ、寝返りを打ちやすい寝具を選ぼう
寝心地はいいのです。問題はまったく動けそうに見えないこと…。

いま持っている寝具を生かして睡眠環境を改善したければ、上に乗せるオーバーレイ(オーバーレイマットレスとも。マットレスや敷ふとんの上に重ねて使うことで、寝心地の向上を図る寝具のこと)を買い足し、枕は一新するのがリーズナブル。いまどきの寝具の進化には目をみはる。

「基本的には寝返りの打ちやすい高反発の製品がいいでしょう」

ただし、カラダに歪みのある人が高反発の寝具に仰向けで寝ると、背中に浮く場所が現れる一方、接している部分には荷重が集中し、痛みを感じる可能性がある。

「低反発はカラダの歪みを助長するかもしれませんが、痛くて眠れないよりはましです。歪みがあるなら低反発で構いません。太った人が体重のせいで痛むなら、柔らかめを選んでもいいでしょう」

枕は使わないと、後頭部が落ち、口が開き、乾き気味になる。

「口の中は常に濡れてないといけません。乾いてしまうと、痰がはがれにくくなります」

枕が低いと横を向いたときに首が斜めに傾いてしまってよくない。少なくとも耳から肩先(肩峰)までの長さぐらいの高さは欲しい。

「抱き枕を抱えることによって一体となって、ころんと寝返りが打ちやすくなるなら、それもよいでしょう。お行儀よく寝るよりも、子どものように寝相悪く、動き回って眠るのが一番です」

寝る前のストレッチで寝返りしやすいカラダに

寝る前のストレッチで寝返りしやすいカラダに
あっちへごろごろ、こっちへごろごろ。子どものように転げ回っての爆睡が一番。

ここまでで就寝中の寝返りがいかに大切かお分かりいただけただろう。寝返りをもたらすのは肩関節と股関節。この2か所がしなやかに動いてくれないと、自然な寝返りは起こりにくい。

「寝る前、パジャマに着替えたら、寝具の上に横になって、肩関節と股関節のストレッチをしておくと寝返りを打ちやすくなります」

下記イラストの要領で肩関節と股関節をそれぞれに動かす。5分間もかければ十分だ。

ストレッチ
イラスト右/仰向けに寝たら下半身は動かさず、右腕を伸ばして左に大きく回すと肩甲骨が開く。同じ要領で左腕は右に伸ばす。狙いは肩甲骨を動かすこと。これで肩関節の動きがよくなる。
イラスト左/今度は仰向けに寝て上半身は固定する。ツイストの要領で伸ばした右脚を左に大きくひねると骨盤が左に回旋する。同じく左脚は右に大きくひねる。これで骨盤の動きを改善する。

年齢が上がるにつれて、関節の動きは悪くなるもの。特に腕を上に伸ばす動作は日常生活で少ないせいもあって、肩は上がりにくくなるばかり。プロ野球のOB戦を見ると、往年の大投手がかつてより低い位置でボールをリリースするのもこのためだ。

「寒い時期は無理しなくて結構ですが、暖かければ両腕を頭上にバンザイして寝ると、肩と首の筋肉を緩められてお勧めです。この体勢がカラダにいいのは、ヒトが四足動物だったころの名残です」

布団に潜り込んだら、全身の関節を1か所ずつ緩めていこう。全身が緩むころには副交感神経が優位になって、睡眠の準備は完了する。では、おやすみなさい。

取材・文/廣松正浩 イラストレーション/安ヶ平正哉 取材協力/遠藤健司(東京医科大学整形外科学分野講師)、三橋美穂(Sleepeace代表、快眠セラピスト/睡眠環境プランナー)

(初出『Tarzan』No.711・2017年1月26日発売)

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